医師ならではの医療効率化策を明示
評者 慶応義塾大学経済学部教授 土居丈朗
タイトルを見て、逼迫するわが国の財政状況から、必要な医療まで無慈悲に削減する企てを想起するかもしれない。財政学者が書けばそう受け取られても仕方ない。しかし、本書を執筆したのは慢性期医療に30年以上携わり、病院・施設を経営する医師である。
著者は、先進国水準に比べて多すぎる病床(ベッド)と長すぎる入院日数を減らす一方で、不十分なリハビリテーションの体制を強化して元気な高齢者を増やすことで効率化し、2035年に向けて現在の医療費の推計値を半減できる、と訴える。本書には、医師ならではの具体策が明示されており、説得力がある。
わが国は、世界トップクラスの平均寿命だが、寝たきりの高齢者が多く、健康寿命と平均寿命の差が問題視されている。だが、その解消策を病院のあり方と関連付けた議論は不十分だった。著者は、「慢性期病院」で医療に従事した経験とデータから、病気やけがの治療をする「急性期病院」に中途半端に長く入院して寝かせきりとなったり、自立能力を回復させるのが容易でなかったりする患者が多いことを突き止めた。治療を受けるために入院しても、早期にリハビリを受けて生活能力を取り戻し、自宅や施設に復帰できるようにすれば、それだけでも元気な高齢者を増やし、医療費も抑制できる。
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