「底辺への競争」規制に大きい労働組合の役割
評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫
日・独・米の自動車産業を中心としたグローバル化の中の労使関係を丹念に探索した労作である。
企業経営の多国籍化は、それぞれの国や地域の歴史経路に制約されながら、同時に、その異なり方を利用する。それは人的資源、輸送手段、法制度、税制、社会的秩序、各種のインフラ、言語などさまざまな市場条件の考慮である。
しかしそこでは、往々にして基本的な人権が等閑視される。評者はさまざまな途上国で、児童労働、低賃金、劣悪な職場環境が一般的であるという現実を見てきたが、それは日本の戦前あるいは終戦直後の風景ともいえる。
そのような状況の中で、著者は企業展開のグローバル化による、賃金や労働条件の引き下げを競う「底辺への競争」を「規制」する一つの方法としての労働組合の機能(活動)に注目し、そのグローバル展開に期待を寄せる。
たしかに国際労働機関(ILO)による国際労働基準の確立が基本だが、労組は自らを守るためにも「底辺への競争」への歯止めを必要とする。しかし、労働運動は「資本」のように自由に、その活動を展開することはできない。労働運動とは実にアナログなものだ。だが例外はある。
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