託送料金への上乗せはモラルハザードの典型だ
大島堅一 立命館大学教授
原子力発電所の廃炉費用を託送料金(送電線の利用料)に上乗せしてすべての電気のユーザーに負担させるやり方には正当性がない。
2020年の電力小売り完全自由化後も送配電部門には唯一、総括原価方式が残るからというのが理由のようだが、要は取りやすいところから取るやり方だ。本来、発電で生じた費用は発電事業者が負担すべきだ。
今回、廃炉費用の負担問題で「債務認識に伴う課題」という言葉が政府から出てきた。いくらかかるかを見積もって債務認識すると債務超過に陥りかねないから、回避するための制度的な手当てを東京電力の経営者が国に求めている。この考え方は本末転倒だ。
「原発優遇政策」の誤り
今回、このような仕組みを検討せざるをえなくなっているのは、事故を起こした東電を破綻させずに支えてきたことによる矛盾が顕在化したのが原因だ。廃炉にいくらかかるかをはっきりさせると会計上認識せざるをえなくなる。そうなる前に先に電気料金に上乗せして回収するレールを敷いてしまおうというのだ。
さらに今回は、ほかの電力会社の廃炉費用についても、「過去に原発の利益を享受した」ことを理由にして、原発の電気を使わない新電力のユーザーにも負担させようとしている。
その際、廃炉費用の上振れ分も乗せて請求する可能性が高い。原発だけがそのような優遇を認められるのか。モラルハザードの典型だ。
廃炉費用の議論には全体像の明示が必要
遠藤典子 慶応義塾大学 大学院特任教授
福島第一原発の過酷事故に関する東京電力の損害賠償がそうであるように、廃炉費用も、最終的には発災事業者と電気利用者(受益者)、もしくは国民(将来にわたる納税者)の、実質負担の分配問題に行き着く。これは私が委員を務める「東京電力改革・1F問題委員会」(以下、東電委員会)の重要な論点になる。
経営改革の検証も重要
利用者や納税者に負担を強いるには、そうした制度設計が最終的に国民利益に帰するものでなければならず、十分に理解されなければならない。賠償費用については、東電エリア外の電気利用者に大きな負担が寄せられており、電力自由化との整合性も担保されていない。今回の廃炉問題でも、議論のたたき台になるだろう。
東電委員会では、「東電救済ではなく東電改革」「再編を含む非連続の改革」の必要性を確認している。そもそも東電改革が、エネルギー政策、電力供給構造改革の中でどのような位置づけになるのか、エネルギー関連企業の国際競争力を引き上げることにどう貢献するのか、政府によって明示される必要がある。そして初めて、地元福島の信頼を得ることができる廃炉計画とその費用の捻出に、再編がどのように寄与するのか、具体的な制度の検討が可能になる。
事故から5年半が経過し、今こそ本質的な議論を開始するときだ。あれほどの過酷事故を経てなお、抜本的な構造改革ができないならば、エネルギー政策は完全に信頼を失ってしまう。






















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