南シナ海の管轄権を主張する中国の言い分を、常設仲裁裁判所は全面的に退けた。仲裁の前後で激変した米中関係は今後の国際関係に大きく影響する。
今中国では南シナ海問題をめぐり、「裁定前後」という言葉が盛んに使われている。
オランダ・ハーグに置かれた常設仲裁裁判所が南シナ海問題で裁定を下した問題は、日本では中国とフィリピンの領土紛争と考えられている。だが、その実態は米中による海の争奪戦である。
その視点で見たとき、「南沙諸島にEEZ(排他的経済水域)を設定できる島はない」との裁定を引き出した米国が、今回は圧勝した形だ。日本ではこの部分にフォーカスされることがほとんどなかったが、これは同時に周辺のほかの国もEEZは設定できない、つまり経済権益を独占することはできないことを意味する。
米国と並ぶ勝者であるはずのフィリピンは、仲裁裁判所の裁定を前面に押し出して中国に迫ることはせず、むしろラモス元大統領を訪中させるなど融和姿勢を打ち出している。これは南沙海域を「巨大な空き地」にしてしまった裁定に、フィリピンも警戒心を持っているからだ。
またこのことは、直後に開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)外相会議の共同声明で、仲裁裁判の裁定について一言も触れられなかったことにも通じている。
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