“経済国難"を突破する道 [対談]松下電器産業会長 松下幸之助 本社関西支社長 村山公三
物価、住宅、教育、経済政策など、開放経済最終段階の日本が直面する問題について、松下氏はユニークな見解を展開する。(旧仮名遣いなど、原文ママ)
“経済国難”を認識せよ
開放経済最後の関門
〈村山〉新年の日本経済は、開放経済の総仕上げに加えて、金融引き締めで、大企業も中小企業も、相当大きな覚悟をもたなければならないと思いますが…。
〈松下〉今まで二年にわたる自由貿易への開放の過程は案外うまくいっている。経済界は貿易自由化に対して、相当深刻に考え、対策を講じてきたが、それがかえってよかったのですね。たとえば自動車です。自動車は自由化されると困る、最終段階まで延ばそうということで、非常に心配させていたわけですが、幸いに、自動車産業の経営者も、これはたいへんだということで努力をされた結果、今日までに何回か値下げをした。また、内地の需要も多かったため、生産もふやして、著しい進歩発達を遂げた。それに、輸出もだんだんふえています。今の調子でいくと、年内に自由化されても、半年先に自由化されても、たいした心配はないと思います。
いちばん困難と思われた自動車工業もこのように準備態勢ができており、昨年までの進み方はまず無難であった。しかし、あと一〇%の自由化が無事に乗り切れるかというと、安心はできない。今年は困難な為替の自由化にも手を打たなければならん。一〇〇里の道は九〇里をもって半ばとせよ、ということばのとおり、最後の一〇里がたいへんです。
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