大企業や官庁の不祥事の当事者は、事件が発覚した際には、キツネにつままれたような気がする。これまで、組織で肯定的に評価されていたことが、いきなり不適切、不正な行為であったと断罪されるからだ。2002年に鈴木宗男事件に連座して東京地方検察庁に逮捕された筆者も、なぜイスラエルで行われたロシア関連の学会に袴田茂樹青山学院大学教授(当時)、田中明彦東京大学大学院教授らを派遣する費用を、外務省関連の国際機関「支援委員会」(現在は解散)から外務省の事務次官、条約局長、会計課長などの決裁をとって支出したことが背任に該当するかがわからなかった。
検察にはそれなりに筋の通った論理があったと思う。外務省を含む政府予算は単年度主義だ。しかし、外務省が国際機関にカネを拠出すると、それはその組織が存続するかぎり、何年先でも使える。「支援委員会」には100億円を超えるカネがあった。外務省関連の国際機関「支援委員会」は、国際機関というのは名ばかりで、日本政府だけしか拠出しておらず、しかも外務省欧州局ロシア支援室長という中堅幹部が要請すれば、いくらでもカネを引き出すことができる仕組みになっていた。そのため、ロシア支援室の連中はタクシー券の私的利用や公私の境界が不明な飲食費に「支援委員会」のカネを使っていた。それだから、特捜検察が筆者と鈴木氏がグルになって「支援委員会」からカネを抜いていたと考えること自体は、不思議なことではなかった。もっとも鈴木氏はカネには困っておらず、筆者も公金で遊び歩くという発想はなかったので、「支援委員会」がらみで筆者と鈴木氏をつなげる事件はできなかった。
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