中国の経済統計をめぐり、日本では「完全なウソ」として中国崩壊論の根拠にする議論がもてはやされている。しかし、そこにはかなりの勇み足がある。
米国の利上げの予測が遠のいたこともあって小康状態にあるかに見える中国経済だが、このところその現状評価をめぐって中国政府内でも見解が大きく分かれてきているようだ。年初に株価の急落が注目を集めた後、政府は銀行の窓口規制を緩め、実質的な減税を行うと同時に公共投資を拡大させるなど、財政・金融政策で景気を下支えする姿勢を明確にしてきた。
しかし5月9日になって共産党機関紙の人民日報に、「権威筋」の発言という形を取って安易な景気刺激策が改革を遅らせることを懸念する論説が掲載され、注目を集めた。この論説は、習近平国家主席のブレーンで市場主義的な改革の提唱者として知られる劉鶴氏の見解を色濃く反映したものとみられており、景気刺激策の舵取りをする李克強首相と習主席との不協和音を反映したのではないかなど、憶測を呼んでいる。
党内の不協和音の真偽はともかく、中国経済の現状に対する判断が大きく分かれる背景には、議論の前提となるはずのGDP(国内総生産)など経済統計の信頼性の低さの問題があることは間違いない。2015年上半期の実質成長率が7%という数字が公表された頃から、中国の経済統計への疑念やそれに関する議論が中国の内外で盛んに生じてきた。15年は多くの工業製品の名目生産額がマイナスになっていたにもかかわらず、工業部門の付加価値は実質6%の伸びを記録するなど、統計間の不整合が目立ったためだ。
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