複眼的に見つめ直す絶好機を与えてくれる
評者 北海道大学大学院教授 遠藤 乾
ラディカルで画期的な本である。
内に抑圧を強め、外に軍事的圧力を高める習近平政権下の中国に対しては、いきおい強面イメージが優勢となる。そんな今、本書は同じ中国におけるリベラリズムの水脈を探りあてる。一時的に「失語」状態になったとしても、枯れることのない論者の声に耳を澄ますのだ。
たしかに、清国末期の梁啓超、中華民国期の胡適から現代の徐友漁氏や賀衛方氏まで、あるいは五四運動から六四(天安門)事件、08憲章まで、中国には権力に抗し個人の権利を重んじる古典的な自由主義(これを「近代」と言い換えてもよい)の系譜がある。本書は、その潮流を、日中を横断して手をつなぐ知識人の社会的営みのなかに見てとってゆく。
それは、反時代的な試みであるにとどまらず、世界史的な意義を帯びる。
中国の近代史において、ブルジョワ革命はあっという間に共産主義革命によって取って代わられた。その結果、市民的自由を根づかせる経験が持続しないまま、一党独裁の下で専制と接続し、権力的に平等を押しつける時代に突入してしまった。
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