民主政治は、基本的人権や法の下の平等などの建前と、啓蒙された自己利益、つまりある程度長い時間軸で自分の利益を考える計算能力というかなり高度な前提に依拠している。人間はいつも賢く行動するわけではなく、世の中にはそんな建前とは反対の現実のほうが多いので、そこから民主主義なんて虚妄だという批判が簡単に広がる。
したがって、民主政治において庶民感情をどう活用するかは、難問である。庶民感情が弱い者いじめや、異質な少数派への排斥に向かえば、庶民を動員する独裁者の下で多数の専制が生まれる。他方、特権を持ったエリートに対する批判に向けば、公平、平等な社会を作り出すための改革のエネルギーにもなる。
その点で、庶民政治(ポピュリズム)は両義的だ。20世紀初頭の米国では、ロバート・ラフォレット(ウィスコンシン州知事)やセオドア・ルーズベルト大統領のリーダーシップの下で、庶民感情が巧みに政治的エネルギーに転換され、政党におけるボス支配の打破、資本の横暴に対する独占禁止政策などが実現した。
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