2015年12月、ブラジルのルセフ大統領は訪日予定を直前でキャンセルした。国会では財政案の審議が難航、自身の弾劾手続きも進められる中で、本国を離れることができなくなったためだ。
ブラジルの混迷は悪材料が同時多発的に噴出し、相互に波及しながら増幅したことでさらに深まった。
要因の一つは、輸出の約2割を占める最大の貿易相手国である中国経済の減速だ。鉄鉱石など1次産品を中心に中国へ輸出してきたが、資源価格の下落が打撃となり、ブラジルの実質GDP(国内総生産)は14年第2四半期から前年同期比でマイナスに転落。税収の下振れにより、14、15年のプライマリー収支は赤字になった(図1)。
外部環境の悪化に「人災」も加わった。ブラジル最大の企業である国営石油会社・ペトロブラスの汚職問題が14年3月に表面化。過去10年間、取引先の建設会社などと水増し契約を繰り返すことで作った裏金を、有力政治家に渡していたのだ。この問題は、政財界にまたがり100人以上の逮捕者を出す一大スキャンダルに発展した。
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