梶谷 懐 神戸大学大学院教授
めまぐるしく変化する現代中国の情勢を理解するために、まずは歴史的な視点を身につけたい。中国社会の表層的な変化に目を奪われることなくニュースや新聞報道の背景を読み解くには、「変わらない部分」を常に意識しておく必要があるからだ。
内藤湖南や宮崎市定による優れた通史が岩波文庫から復刊されているが、なにぶん書かれた時代が古い。その点、著名な人物が織りなす政治史と社会の変化をとらえた経済史のバランスがよい『中国の歴史』は、現代の古典である。この『中国の歴史』が概論なら、『近代中国史』は、中国の社会経済的な構造の解明に特化した各論である。中国社会の「変わらない部分」に関する豊富な知見がわかりやすくコンパクトにまとめられており、現代中国に関心がある人も興味深く読めるだろう。
『満州事変から日中戦争へ』は、日中はなぜ戦争に至ったのかという問題を「条約と国際法の解釈をめぐるすれ違い」という観点から読み解く。中国への対応を誤り、国際的に孤立した当時の日本外交から、反面教師として学ぶべき点は多い。
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