安全保障法制案の国会審議が始まった。その冒頭、5月27日に安倍晋三首相は集団的自衛権の行使の際に他国の領域における武力行使の可能性があることを認め、戦時の機雷掃海のみを例外としてきた従来の方針を転換した。質疑の中では、武力行使が現実化するさまざまな例外が次々と繰り出され、一連の法制案が武力行使の歯止めにならないことが明らかになっている。
安倍政権が目指す安保政策の転換は、日本の戦後の歩みをどう評価するかという問いと密接に関連する。敗戦70周年の日に向かって、われわれは戦後史の意味と、日本の国家路線とを併せて考える必要がある。
安倍は5月訪米の際、議会で演説し、米国の政治家や国民に向かって、戦後日本の民主政治の安定と繁栄を誇り、それは米国と価値観を共有し、協力してきたから可能になったと述べた。彼の指摘は正しい。日本は、事実上米国が原案を作った憲法の下で、民主主義と繁栄を実現した。
この筋書きは、ポツダム宣言で示された日本再建の路線そのものである。党首討論で、安倍は志位和夫共産党委員長の質問に答え、ポツダム宣言をつまびらかに読んでいないと言った。読んでいないのは勉強不足だが、自分が米国で誇らしげに語った戦後日本の歩みがポツダム宣言に由来することくらいは認識しておくべきである。
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