元会長の巨額借り入れ事件を契機に、創業家との争いが続く大王製紙。背景には、双方の仲介役を果たした同業・北越紀州製紙との確執のほか、業界再編への思惑も影響している。
大王と創業家の争いは、カジノ遊興費に絡む子会社からの巨額借り入れ事件を受けて、2011年9月に創業家出身の井川意高氏が会長を辞任したことにさかのぼる。当時、実父で顧問だった高雄氏も解職に追い込まれた。大王の創業者・伊勢吉氏に始まる井川家直系が追放されたことになる。
仲介役として登場したのが北越紀州だ。同社は12年6月、高雄氏や意高氏ら創業家から、大王やグループ会社の株を買い取ると発表。グループ会社の株は大王へ譲渡すると同時に、大王本体の株(議決権保有比率22%強)は自ら保有し、大王を持ち分法適用会社とした。このとき、前年解職された高雄氏が大王顧問に復帰した。
そもそもなぜ北越紀州が仲介に乗り出したのか。「かつて敵対的買収を仕掛けられたときに助けてくれた。その恩義に報いなければと考えた」(同社)。
06年7月、北越紀州の前身・北越製紙は、同業首位・王子製紙(現王子ホールディングス)からの経営統合提案に反対を表明。敵対的買収に発展した。当時、大王の子会社社長だった意高氏は、業界団体・日本製紙連合会の理事会に出席し、王子の敵対的買収に異論を唱えたという。そのかいもあってか、三菱商事や日本製紙がホワイトナイトとして北越株を取得したほか、大王も2%の株を取得。敵対的買収を未然に防いだ。
再解職の高雄氏は大株主浮上
かつて助けられた北越紀州が、今度は大王を助ける──。これで終わればめでたしめでたしだが、少子化とデジタル化で紙需要の減退が続く中、業界再編の思惑も絡み、事態は複雑化している。
13年2月には、大王の関連会社の川崎紙運輸が北越紀州株を買い集めていたことが発覚。大王が設けた外部委員会の調査報告書では、株買い集めは「問題なし」としたものの、川崎紙運輸取締役で大王特別顧問の井川俊高氏(高雄氏実弟)が、川崎紙運輸代表者に北越紀州株買い付けを指示したと認定。俊高氏が「大王の筆頭株主になる北越紀州株を取得することは、大王の独立性を確保することにつながると判断」したことなどが報告された。
業界では王子と日本製紙が2強。4位の大王、5位の北越紀州は「第三極の結集」では一致しても、いかに主導権を保ちつつ業界再編に向かうか、絶妙な舵取りが求められる局面にある。主導権争いに直結するのが持ち株比率で、両社が神経質になるのは当然だ。大王側の委員会の結論に納得できなかった北越紀州は、13年6月の大王の株主総会で、佐光正義社長の再任議案に「反対」票を投じた。
さらに昨年14年6月には、顧問を務めていた高雄氏が、巨額借り入れ事件直後に顧問を一度解職されたことに対し、佐光社長を名誉毀損などで提訴。対する大王は同10月、「社内機密情報を複数の金融機関に漏洩するなど顧問契約違反があった」(同社)との理由から、高雄氏との顧問契約を再び解除した。この間、高雄氏は大王の株を再び買い集め、第10位(2%強)の大株主に浮上している。
いったん沈静化したかに見えた大王と創業家の争いだが、創業家内での非直系の台頭や、筆頭株主との確執などから、事態はまだ流動的といえそうだ。























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