古き因習と最先端ビジネスの狭間でうごめく巨大国家を圧倒的筆力で描き出す。
ブータン、チベット、ネパールと書き、インドに至った
──インドが舞台です。
これまでブータン、チベット、ネパールを舞台に書いてきた。書くたびに立ち現れるのがインド。ブータンでいえば、外交と軍事はインドに依存しているし、チベットはまさに中国とインドがせめぎ合う所で、今はほとんど中国化された。ネパールも両大国に挟まれ、インドの影響力を強く感じるのが常だった。
──たまたま会った中学同窓生の経験談が執筆を促したとか。
10年ほど前、通っているスポーツジムで、それこそ数十年ぶりに中学校時代の同窓生に会った。黄銅鉱を買うためにインドに出掛けているとかで、そこでの話を聞かされた。鉱山に行く道すがら延々と続くスラム。一方、泊まったのはタタ財閥の造った目もくらむ豪華なホテル。そのすさまじい落差。しかも商売相手がいかに手ごわく、日本人ビジネスマンの常識が通用しないか、と。その瞬間、まじめに取り組んで書きたい小説の題材だと一気に感じた。
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