医学博士、新渡戸文化短期大学学長 中原英臣氏に聞く 『感染症パニック』を書いた

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デング熱、エボラ出血熱騒動は新たな「始まり」にすぎない。感染症と「共生する」知恵とは。

感染症パニック (講談社+α新書)
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撲滅に成功した感染症は天然痘だけ

──感染症の撲滅は難しいのですね。

撲滅に成功した感染症は天然痘だけといっていい。新興感染症に加え、耐性菌のような再興感染症も出てくる。感染症は永遠になくならない。人間は細菌やウイルスと永遠に闘うことになる。

地球カレンダーというものがある。地球が誕生した46億年前から現代までを1年365日で表す。現生人(ホモサピエンス)が登場したのは20万年前だから、1年のうちで日付を取れば12月31日の午後11時37分。21世紀に至っては同時間の59分59秒にようやく入る。そう考えると、細菌やウイルスはどれだけ気の遠くなるような時間をこの地球上で生きてきたことか。そんな進化に耐えてきた連中がそう簡単に人間にやっつけられるわけはないと認識することだ。

──一方で、問題になっている感染症は「文明病」ともいわれます。

今や日本人は未開のジャングルの隣に住んでいるのも同じ。昔の船での移動の時代だったら、たとえばエボラ出血熱がアフリカではやっても日本には絶対に入ってこない。感染しても船に乗っている間に感染者が死んでしまう。ところが、現代は飛行機での移動。時間的にはそのウイルスの自然宿主がすぐ隣にいるのと同じになっている。そう認識したほうがいい。要するに、新興感染症というのは文明病でもある。

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