ソフトバンクが握るPHS400万の命運、コストダウンで再建…次なる一手は

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 更生計画案の提出延期もある意味でかつての状況と似ていた。そこで管財人はソフトバンクに全面的な支援を要請し、8月2日に同社とのスポンサー契約を取り付ける。新たにソフトバンクモバイルの宮内謙副社長が事業家管財人に就任。従来計画は変更され、ウィルコムに対するファンドの出資分をソフトバンクが譲り受けて完全子会社化することになった。主力行に対しては9月に更生計画が提示されたが、「ソフトバンクが支援するなら」(銀行関係者)と、特に反発が出た様子は見られなかった。

機構が支援決定を発表した際、ウィルコムの収支計画として2013年3月期に営業収益1485億円、営業利益123億円という数字を出していた。一方、今回の更生計画案では同期の営業収益が1115億円、営業赤字21億円と、かなり下方修正されている。法的整理以後、同社が裁判所に毎月提出していた月間報告書によると、4月以降も営業赤字が続いており、足元で厳しい状況に変わりはない。
 
 技術的な特性からPHSは医療機関で広く使われており、そうした面では公共性が高い通信インフラだけに、ソフトバンクによる再建は重責といえる。10月28日の決算説明会で孫正義社長は「PHSは役割を終えたとかいろいろ言われるが、やりようはあると考えており、あらゆる可能性にチャレンジしたい。再建はやってみないとわからないが、『やる』という意思で救済に入った」と決意を語っている。ジリ貧と言われたボーダフォンを買収後、一気呵成に通信インフラを増強し、奇抜な料金戦略とiPhoneに代表される魅力的な端末を続々と展開し、グループの収益柱に変身させた実績はある。

更生計画提出前に、管財人補佐として営業戦略や技術、プロジェクト運営、事業企画、人事、経理とあらゆる分野の担当として20名以上の人材を送り込んでおり、“ソフトバンク化”は急ピッチで進む。中でも、管財人代理の1人である宮川潤一氏は、ソフトバンクモバイルCTOで孫社長の大胆な戦略の実現を担ってきたキーマンだ。単純に事業計画の数字だけみればコストダウンで収支黒字化。はたして、本当にそれだけなのか。思いもよらぬ事業戦略が飛び出す可能性もありそうだ。
(井下 健悟 =東洋経済オンライン)

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