水ビジネスの幻想と現実[1]--脚光浴びる“86兆円産業”、日本勢に勝算はあるか

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一方、日本には、ヴェオリアやスエズのような水の総合会社が存在しない。そこで登場するのが、海外で発電施設や鉄道などのインフラ・プロジェクトを手がけてきた総合商社だ。冒頭でも触れたように、各社は水分野でもBOTなどのインフラ案件獲得を狙って、事業ノウハウを持つ海外水関連企業の買収や出資・提携などによる体制整備を急いでいる。丸紅は中南米の上下水道会社を傘下に収め、昨年末には中国の下水処理大手、安徽国禎環保の株式30%を取得。100%出資の民営水道子会社を持つチリでは、さらにほかの水道会社買収も計画中で、朝田照男社長は「水ビジネスの分野で早期に世界のトップ10入りを目指す」と意気込む。

商社以外では、日立製作所が本格的な海外進出を目論んでいる。情報制御機器や水処理装置などを手がける同グループの水関連売上高は1200億円近いが、ほぼ全額が国内自治体との商売。「今後は海外事業を強化する。それも機器を売って終わりではなく、自分で施設を保有して運営まで手がけるなど、水メジャーが得意とするBOTの分野にも入っていきたい」と日立プラントテクノロジーの上田新次郎副社長。

入札参加実績を作るため、今年1月、モルディブの国営上下水道会社に2割出資して、役員を含め数名を派遣した。「日立の技術を総動員して、省エネ化や水の総合管理による経営効率改善を目指す。そうした実績ができれば、他の国でもチャンスが出てくる」(上田副社長)と期待を寄せる。

かくして、総合商社を筆頭に、海外での水事業拡大に意欲を見せる国内勢。果たして、その思惑通りに“宝の山”へとたどり着けるのだろうか。

下水処理場の建設ラッシュにわく中国での「現実」

新興国における水のインフラ需要。中でもケタ違いに大きいのが中国で、同国では今、すさまじい勢いで下(汚)水処理場の建設が進んでいる。経済産業省の予測でも、中国の水関連市場は25年に全体の15%を占め、世界最大の市場になる見込みだ。

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