中国鉄道のイメージを一新した「Z列車」の功績 高速鉄道開業前、主要都市間を結んだ夜行特急

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画期的なグレードアップが図られた25T型だが、車両の製造会社により大きく分けて2つのタイプがある。1つは、2004年4月の「第5次鉄路大提速」実施より半年ほど早い2003年末に導入された「BSP」と呼ばれる外資との共同で製造されたタイプ。もう1つは、国内のメーカーが製造したタイプだ。

BSPとは、正式名称はBombardier Sifang Power (Qingdao) Transportation Ltd. といい、カナダの車両メーカーであるボンバルディア(Bombardier)と、山東省青島市にある中国中車青島四方機車車輛(設立当時は中国南車)の「四方(Sifang)」との合弁会社だ。

筆者は、北京を拠点とする鉄道関係メディア関係者の協力を得て、Z列車の本格運行が始まった直後、BSP車両の上海行きZ列車に乗車する機会を得た。横長の窓が醸し出す特徴的なフォルムがそれまでの中国の客車とはまったく異なる雰囲気を感じさせるとともに、車内の造り込みの見事さには目を見張った。

「飛行機より絶対にいい」

当時、欧州でやはりエグゼクティブ層の出張需要を掴みかけていた夜行列車のシティー・ナイト・ライン(CNL)が小さなスペースでできるだけ多くの乗客を収容するような設計だったのに対し、BSPの25T型は従来の軟臥車と同様に各個室が広々としていた。それに加え、ボンバルディアによる欧州の設計文化がパーツの一つ一つにしっかりと浸透しており、車内の調度品のよさに心を打たれた覚えがある。「長距離フライトのビジネスクラスよりも絶対に居住性がいい」とチケットを取ってくれた現地メディアの担当者が勧めたのは間違いではなかった。

「19K型」の高包車個室寝台=1997年5月(筆者撮影)

国内製の25T型は、BSP車両よりやや遅れてZ列車用として導入された。基本的には軟臥車と軟座車で構成された編成だったが、行き先によっては各コンパートメントにシャワーユニットが付いた「高包車」と呼ばれる個室寝台車が連結された。

中国での「高包車」は、もともとロシアに直行する国際列車にのみ連結されていた車両で、ベッドを上下段ではなく2つ並べて個室内をツインルームとしたものだ。その後、在来線経由で香港へ乗り入れる北京発、上海発の長距離列車にも導入された経緯がある。

25T型は、最高速度は一世代前の「25K型」と同じ時速160kmだったが、ノンストップ走行できるよう足回りが強化されていた。寝台列車では致命的な振動や騒音などを感じることもなかった。

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