中国鉄道のイメージを一新した「Z列車」の功績 高速鉄道開業前、主要都市間を結んだ夜行特急

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「夕発朝至列車」の最高速度は時速160km。夕方に出発すると、目的地には国内線フライトの始発便より早く着き、飛行機よりも上質な乗務員のサービスを受けながら、同行者と車内でのんびり夕食や朝食が楽しめる――。それまでの中国における鉄道のサービスのイメージを大きく覆す列車だったと言っても過言ではないだろう。無停車・直通化で、それまでの特快(特急)列車と比べて所要時間も2時間程度短縮された。

エグゼクティブ層が鉄道利用に

25T型客車を使ったZ列車は「軟臥車(4人用個室寝台)」、もしくは「軟座車(1等座席)」で編成され、バーのエリアを設けた食堂車もありと、当時は「走るホテル」と称された。Z列車の登場で社会に最も大きなインパクトを与えたのは、当時、増えつつあった民間企業のエグゼクティブ層が列車を利用するようになったことだ。

従来型「22系」軟臥車の車内=1985年(筆者撮影)

それまでの列車といえば、編成の大半は乗り心地の悪い直角椅子の「硬座車(2等座席)」で、一般庶民はオープンスペースの3段寝台が設けられた「硬臥車(2等寝台)」のチケットが取れれば運が良い、といった状況だった。その当時も軟臥車が1編成に1両は連結されていたものの、チケットは一部の外国人や政府関係者に割り当てられる程度で入手はなかなか難しかった。列車の旅は通路やデッキにも人が溢れるのが日常的だった当時は、辛い旅を強いられる鉄道を避けたいと考える人も少なくなかったようだ。

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