中国鉄道のイメージを一新した「Z列車」の功績 高速鉄道開業前、主要都市間を結んだ夜行特急

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その後、中国は高速列車の時代に突入し、寝台列車にも動力分散型(電車)の「動車組」(D列車)が導入されたが、これはZ列車が切り開いた「夕発朝至列車」の需要が確実に存在したからだろう。その点において、25T型による「中国長距離列車のサービス向上」への貢献は大きい。

高速化の進展で、北京―上海間をはじめとする主要都市間の夜行列車は25T型のZ列車から寝台付き動車組に置き換わったが、運行は続いている。現在、北京南駅―上海虹橋駅間を最速の「復興号」で行くと4時間28分で着くが、Z列車から引き継がれた北京駅―上海駅間を走る動車組の「夕発朝至列車」はたっぷり12時間かけて運行されている。

今も走り続ける「Z列車」

では、25T型客車編成のZ列車は現在どこを走っているのだろうか。

「名物列車」的な観点でいえば、新疆ウイグル自治区のウルムチ、チベット自治区のラサを出入りする列車のほとんどはZ列車として走っている。さらに、北京から西南地方と呼ばれる重慶や昆明への直通列車もZ列車のままだ。そのほか、広州とハルピンや長春などの東北地方とを直行で結ぶ列車もZ列車となっている。

こうした列車は、そもそも線路規格が高速化されていない区間を通るという事情もあるが、安い運賃で遠くへ行きたい「出稼ぎ者需要」が根強く残るという背景もある。列車で2泊を超えるような距離は国内線フライトに乗った方が明らかに便利だが、「列車の運賃の安さには代え難い」という需要も残っているわけだ。

利用者から見て、客車列車は「安く乗れる」のが大きなアドバンテージだ。高速鉄道が開業しても長距離の在来線列車を残そう、という考えは「辺境地から大都市への人口流入」が続く中国社会の構造を如実に示しているといえる。

Z列車よりさらにゆっくり走る「特快(T列車)」「快速(K列車)」の運行も続いている。25T型こそ導入当時の特徴あるカラーリングのまま走っているが、それ以前の旧型客車(単層車両)はいずれも緑色一色に塗り替えられてしまった。緑の客車は、遅い列車の代名詞として「緑皮車」と呼ばれ、今では逆に現地の若い鉄道ファンたちの注目を浴びるようにもなっている。列車の旅は、必ずしも速いだけがいいわけではないのかもしれない。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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