「のび太みたいな子」が有望だと言い切れるワケ 「かけがえのない一員」として認められている
しずかちゃんのハートを射止めて結婚まで導いたのは、まさにのび太の優しさでした。しかも、彼が仲のいい友だちだけではなく、ときには敵対するような人にまで、生来の優しさを発揮することは少なくありません。その優しさは、彼の生活の中で潤滑油のような働きをしており、のび太に楽しく生きるエネルギーを与え続けているのです。
「このかぜ うつします」(『ドラえもん(2)〈てんとう虫コミックス〉』小学館)というお話があります。
のび太は、仕事に行かなければいけないのに風邪をひいてしまったのび太のパパのために、ドラえもんにひみつ道具「カゼをうつす機械」を出してもらい、パパの風邪を引き受けます。おかげでパパはすっかり元気になりますが、のび太は重度の風邪に見舞われてしまいます。そこでのび太は、ジャイアンやスネ夫に風邪をうつしてやろうとするのですが、スネ夫のパパがスネ夫を心配しているのを目にしたり、風邪を引いているのび太をジャイアンが気遣ってくれたりしたため、思いとどまって誰にも風邪をうつさなかったのでした。
この作品では、のび太の優しさが何度も垣間見えてきます。のび太の優しさは生まれ持っての才能ともいえるほど優れたもので、どんな相手に対しても心底から憎んだり、存在そのものを否定するような言動は取りません。
自然現象にまで愛情を注ぐ
また、のび太の優しさが発揮される対象の範囲は、とどまるところを知りません。
人だけではなく、動物や植物、竜などの架空の動物も対象に入ります。さらには、作品で登場する台風、つまり自然現象にまで愛情を注いでいるのです。
『ドラえもん(6)〈てんとう虫コミックス〉』(小学館)の「台風のフー子」というお話では、ドラえもんの四次元ポケットから出てきた台風の卵を自分で温めてかえそうとします。ドラえもんは「あぶないからすてよう」と言いますが、のび太は「かわいがって、そだててやるんだ」と断り、この台風にフー子という名前までつけてあげます。エサを自分で作ったり、遊んであげるなどかわいがり、フー子ものび太をいじめるジャイアンを吹き飛ばすなど、のび太を慕います。大型台風が日本に接近しているというニュースで大騒ぎになっているとき、フー子は家を飛び出して大型台風に対決を挑み、ぶつかって大型台風を消し去ると同時に自身も消滅してしまいました。
結果的にフー子に救われたのび太たちですが、フー子が台風上陸を阻止すべく立ち上がった背景には、本来は人間の敵と恐れられる台風にさえも、分け隔てなく優しさを注いだのび太の愛情があったからこそでしょう。のび太の優しさは、自然現象である台風にまで十分に伝わるもので、フー子にはとてもうれしいものでした。
そして最後は、フー子はその優しさに報いようとしたのです。
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