社長失踪で突如「全店閉店」人気パン屋倒産の顛末 神奈川地盤「ベルベ」積極出店の裏で自転車操業

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毎年のように新規出店し、一定額の月商を下回る店舗は順次閉店。賃料、面積でより条件の良いテナントへの移転を進めるなど、積極的なスクラップアンドビルドを繰り返し、安定した収益を確保。コロナ禍の影響が出た2020年6月期の年売上高も過去最高となる約25億6000万円(会社公表値)を計上するなど、県内上位クラスの売上高を誇った。

2021年9月18日にオープンした静岡・裾野店では、パンを買い求める人々が列をなし、駐車場も満杯の盛況ぶりだったという。消費者、取引先、金融機関などからは直前まで、コロナ禍をものともせず積極的に拡大基調を続ける「優良企業」と見られていた。

社長が突然の失踪

しかし、2021年10月下旬に借入金の返済遅延、複数の取引先に対する支払遅延が判明。そして11月2日、事態が急変した。前日まで連絡の取れていた社長が書き置きを残して失踪し、家族も会社関係者も誰も行方がわからなくなったのだ。残された専務取締役らが中心となり社外対応に当たっていたが、それまで経理面にタッチしていなかったこともあり、状況は刻一刻と悪化していった。

後に分かったことだが、社長は10月末、東京の弁護士事務所を訪問していた。ベルベの今後について相談するためだが、この時点では破産ではなく、営業継続を前提とする民事再生を検討していたという。しかし直後に社長が姿をくらまし、再生計画自体を早期に立てることができず、事業継続が困難な状況に追い込まれていった。

それでも、11月5日に筆者が取材した段階では、取引先からスポンサー支援の紹介案件がベルベの元に複数持ち込まれるなど、存続の道は残されていたかのように見えた。だが、前述のように10月下旬からすでに資金ショートを起こしており、具体的に話を進めるには時間がなさすぎた。

(写真:筆者撮影)

週明け月曜の11月8日夕刻、1枚のFAXが取引先各社に届いた。

「都合により本日をもって、ベルベ全店の営業を終了させて頂くことに致しました」―。

8日当日も午前中まで通常通り営業を続け、ピーク時400名を超えた従業員にも直前まで倒産の事実は知らされなかったという。

そして明くる11月9日、自己破産申請の準備に入ったことを発表した。

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