初の東大推薦挑戦で3名合格「山東探究塾」の裏側 山形東高「授業中心主義」崩さず探究を日常化

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
山形県内トップの進学校として知られる山形県立山形東高等学校。2021年度は、一般受験で難関大学に多数の合格者を出すだけでなく、狭き門といわれる東京大学の学校推薦型選抜に初めて挑み、3名の合格者を輩出した。推薦での東大合格は、県内でも初の快挙だ。この成果の秘密は、3年前の「探究科」新設を機に取り組み始めた探究活動「山東(やまとう)探究塾」にあるという。

探究科も普通科も関係なく全員に「山東探究塾」を

「温泉と雪で熱電発電」「イオン交換樹脂を用いた新たなクリーンエネルギーの開発」「ベンフォードの法則の普遍性について」――これらは山形県立山形東高等学校(以下、山形東高)の2年生が探究活動で取り組んでいる研究テーマの一部。「こんな高度なことを?」と驚くかもしれないが、これが同校のリアルだ。

山形県は2018年度、新学習指導要領や高大接続改革の方針に合わせる形で先行して探究に取り組むべく、県立高校3校に「探究科」を新設した。そのうちの1校が県内トップの進学校、山形東高だ。しかし県から方針が出た15年当時、「本校131年の歴史において新学科の設置は初めてのことで、現場には激震が走りました」と、教頭の森美千子氏は振り返る。

まずは校内で15年度から希望者制の「山東探究塾」を発足し、手探りで探究活動を進めた。また、17年度からは探究型学習を推進するための中核教員が、福井県立藤島高等学校や石川県立金沢泉丘高等学校、京都市立堀川高等学校など探究先進校での視察研修なども行った。

「初めは先進校のやり方でやってみようと思っていましたが、途中で本校は何を目指すのかをはっきりさせなければ何もできないと気づきました」と話すのは、教育企画課の佐々木隆行氏だ。

教員たちで議論し、目指すべき「山東生像」は、グローバルな視点で地域の困難な課題を解決するイノベーターであること、そして山形に思いを寄せながら世界や国・地域で活躍するグローカルリーダーであることを明確にした。そのうえで、先進校を参考にしながら独自の探究モデルを練り上げたという。

大きな特徴は、総合的な探究の時間を中心に行う山東探究塾を全員に展開しているところだ。「学校全体で“人材育成のプログラムは山東生全員に”、という強い思いがある」(森氏)ため、探究科を設置した18年度の新入生から順次、探究科も普通科も区別なく全員が探究活動に取り組む体制にした。探究科の生徒は、2年次に「理数探究科」と「国際探究科」に分かれて普通科よりも1単位多く探究に取り組むが、探究活動においてそれ以外に異なる点はない。

支援者の開拓や研究資金調達など「大人顔負けの活躍」

具体的には、1年次は東北芸術工科大学による「デザイン思考」などを新入生研修で学ぶほか、グローカルリーダー養成講座やビブリオバトル、テーマ発表会などを通じて探究スキルを習得していく。

1年次の山東探究塾におけるビブリオバトルのグループワーク。ここから学校代表が選ばれる

2年次は、各自に研究テーマを定めて課題解決型の探究活動に挑む。個人でもグループでもOKで、複数の研究をかけ持ちしてもよい。そして、全員が外部機関や専門家を招いたプレ発表会、中間発表会、成果発表会を行う。1年生はこの2年生の発表をすべて見るため、「先輩たちよりいいものにしよう」とライバル心を燃やすようで、年々探究活動がレベルアップしているそうだ。

国際探究科2年次のシンガポール研修。現地の高校生や大学生も交えて自分たちの課題研究を英語で発表し、有識者からの審査を受ける。コロナ禍の2020年度はオンラインで実施

3年次は、2年次の活動の集大成として「研究集録」を作成するほか、課題研究を通じた学びを自分の将来と関連させる自己探究に取り組み、進路実現に向けた準備を行う。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事