ryuchell「子どもの失敗は大歓迎」と語る深い理由 「自己肯定感」「SNSいじめ」「失敗力」大いに語る
「沖縄の学校は、振り返ればとても自由だったなと思います。沖縄は外国人と日本人カップルの子どもも多いし、宗教やLGBTQを公表している子も多い。学校の校則も東京と比べれば、とても緩くて全然雰囲気が違うと思う。それでも、意外に思われるかもしれませんが、僕は中学校の時は、いわゆる仮面をつけていて本当の自分を出せなかったんです。学校全体の雰囲気は緩いものの先輩後輩などの上下関係がとても厳しく、人間関係で悩み、本当の自分を隠して、目立たないように、空気のように周りに合わせて生きていたんですね。でも、ある時もうそんな自分は嫌だと思った。そこから一念発起して、中学校の知り合いが1人もいないところを頑張って受験し、自分らしくいられるようになったのが高校の時でした」
もともとの地域柄で、多様性にあふれていたという沖縄。しかし学校の中では、「多様性」や「個性」が認められることの難しさも感じていたという。
「例えば、白人の親を持つ子と黒人の親を持つ子の数を、クラス内で調整していたのも、僕には違和感がありました。その人の外側ではなくて、『その人自身』を見てもらう難しさを中学校時代から感じていたんですね。それは大人になっても続いていて、『見た目』で判断されてしまうこともすごく多いな、と感じていました。僕がテレビに出だした頃、派手な格好をしていたからか、それだけでたたかれたり、『子どもが子どもを産んだ』とさんざん言われたんです。だけど、僕めっちゃ税金払っていたんですよ!(笑)。今でもギャルを見れば、格好だけで判断して『水道料金払ってなさそう』って大人の人、言うじゃないですか(笑)」
みんなが互いの違いを認めるというのは、そう簡単なことではないと続ける。
「簡単ではないからこそ、学校でも校則など一定の決まりを取り入れざるをえない側面もあると思います。また、みんなと一緒が心地いい子もいる。そういった一定の決まりがある世界では、そのレールを飛び出す子どもは、どうしてもはみだし者として扱われてしまいがちです。でも、僕が芸能の世界にいるから、とくに思うのかもしれませんが、あえてレールから飛び出した方が、社会では大きな成功を遂げやすいという場合もありますよね。僕自身も社会人になって、学校では教えてもらえなかったやり方に急に直面して戸惑ったことを覚えています。社会全体で、もっとレールを飛び出す人にも慣れて、お互いの偏見を少しずつ減らしていけたらいいですよね」
「SNSが、僕の世界の味方になった」
人は人、自分は自分と割り切れず苦しかった中学校時代でも、ryuchellさんは、子どもが陥りがちな「学校がすべてのように感じてしまう」心境にはならなかった。SNSという風穴があったからだ。中学3年生の時からSNSを始め、自分のファッションを投稿した。更新するたびにフォロワーは増え、東京など各地にファンが増えていった。高校に入学する頃には、すでにちょっとした有名人になっていたのだという。
「僕みたいな派手な子が、急に何の情報もなく高校の入学式にいたら『なんだあいつ』って指を指されたかもしれないけど、すでにSNSで有名になっていたおかげで『あの子、SNSで有名なんだよ』『そうなんだ』と、ありのままでいてもすんなり受け入れられた感じがありました。その意味でも、SNSには本当に助けられましたね。中学校時代も、全国で高校生活をエンジョイしているたくさんの先輩の姿をSNSで見ることができたので、それが心の支えになっていたと思います。だから、親御さんや先生も、SNSを、ただえたいがしれないからという理由だけで心配の種と決めつけないであげてほしい。例えば、僕もすでにTikTokはわからないですが、今使いこなしている子たちは、どう付き合えばいいかがわかっていると思います。SNSネイティブな子たちは、大人が思っているよりずっと、使い方もきちんとわかっていると思う。もっと信じてあげてもいいのかな、と思います。子どもたちが、今あるツールを使ってどうやって生き抜いていくのか。その道を自分でつくっていく過程を見守るのも、大事な教育だと思うんですよ」