睡眠不足が脳の発達や自尊感情を脅かす深刻実態 「睡眠教育」の推進で不登校数が減少した例も

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

30分~1時間の面談のうち9割は子どもの話を聞き、「あなたのことが大切だ」ということを伝えながら、最後に「やってみないか」と行動目標を一緒に立てる。そんなふうにカウンセリングマインドを重視し始めると、睡眠や不登校が改善する子どもが増えていったという。

さらに、「『信頼関係がある人』から『緊張感』とともに助言されると改善に向かいやすい」と、木田氏。睡眠が改善した子どもたちに調査したところ、共通して「担任と保護者に言われても改善しない」ことがわかったのだ。

「生徒指導担当や副担任など『仲はいいけど、少し距離がある』『信頼しているけど、ちょっと怖い』と子どもが感じている人間が面談を担当すると効果的。いつもジャージ姿なのにネクタイを締める、校長室を借りるなど、緊張感を生む工夫をして担任が面談に臨むのもよいと思います」

子どもの睡眠と保護者の睡眠には相関関係がある

また、木田氏の調査でも、子どもの睡眠と保護者の睡眠には相関関係があることが明らかとなっており、親子で睡眠改善に取り組むと効果があるという。例えば、保護者の帰宅が毎日深夜0時を回る家庭があった。帰りを待っていた小学生と中学生の子どもは、しだいに朝起きられなくなり不登校に。そこで、保護者が何とか仕事を調整し、19時に一時帰宅して夕飯を一緒に取るようにしたところ、兄弟の睡眠は改善して学校にも行けるようになった。

「保護者には、適宜ブレーキ役にもなってほしい」と、木田氏は願う。とくに中学生になると、部活の朝練や夜の進学塾通いなどが始まり睡眠が1~2時間短くなる子が多い。しかし、そのまま頑張り続けると何かにつまずいた瞬間、急に朝起きられなくなるなど不登校になる傾向がみられるという。だから「子どもには『頑張れ』と言いすぎないことも大切」と木田氏は言う。

同市のように医療と連携しながら地域ぐるみで啓発していくことも効果を上げる秘訣のようだ。とくに幼・保から高校まで同じ取り組みをすることで、兄弟姉妹が一緒に睡眠を改善しやすくなるという。

「ただ、本市でも、面談までできている学校と啓発で終わっている学校とで差が出ています。先生方の負担にならないよう、効果的な活動にすることが課題」と、木田氏。同市では、GIGAスクール構想でタブレットが配布されたこともあり、今年度から「みんいくAIアプリ」を市内すべての小中学校に導入した。睡眠状況を入力するとAIが専門家のコメントを提示してくれるソフトだ。現状では費用や運用面に課題があるが、「うまく機能すれば負担軽減や集計の効率化につながる」と、木田氏は期待する。

なかなか改善しない日本の睡眠事情が子どもの健康を脅かしている。健康経営を重視する企業が増え、コロナ禍を機に働き方や生活習慣を見直す人も出てきている今は、社会全体で睡眠を改善していくチャンスではないだろうか。

(文:編集チーム 佐藤ちひろ、注記のない写真はペイレスイメージズ1〈モデル〉/PIXTA)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事