「スクールロイヤー」学校問題解決の悩ましい実情 「教員兼弁護士」が語る配置の理想形とは?
不登校もかなり依頼はありますが、理由を特定しにくい。医療や福祉の問題など学校以外の要因も多く、スクールロイヤーだけでは解決が困難な領域です。
――教員の労働問題はいかがでしょうか。
実は、日本弁護士連合会(以下、日弁連)も文科省も、前提としてスクールロイヤーの業務に教員の労働問題の対応は想定していません。仮に対応するとしても、いわゆる給特法は教員の仕事の実情に合っていませんし、本当に業務過多で大変な人もいれば、自身の意向で授業準備や部活動に時間をかけたい人もいて個人差が大きく、とても解決が難しい領域です。
スクールロイヤーのあるべき姿とは?
――課題についてお聞かせください。
実は、現状ではスクールロイヤーについて公的な定義がありません。日弁連では、18年に「子どもの最善の利益の観点から、学校の相談相手として助言する弁護士」と定義しています。保護者の代理人でも学校の代理人でもない位置づけです。
一方、文科省が20年に示した「教育行政に係る法務相談体制構築に向けた手引き」では、学校側の代理人になったり、保護者との面談に直接立ち会ったりする業務を想定しています。つまり日弁連と文科省とでは、そのあり方をめぐって大きな対立があるのです。
また、スクールロイヤーは救世主のように思われていますが、学術的にもほとんど考察されておらず、効果も検証されていません。もっとその専門性や独自性をどのように理解するか、地に足が着いた議論がなされるべきです。
現在、弁護士資格があって教育に関心があれば、誰でもスクールロイヤーを名乗れます。スクールロイヤーが学校教育制度に関わる弁護士であるならば、学校教育の現状や今後の方向性についてきちんと理解しておく必要があるでしょう。教育は自分の経験に基づいて語ってしまう一面があるので、そうなってしまわないように、教員免許や職務経験、教育学の学位など、何らかの証明が求められるべきではないでしょうか。
――スクールロイヤーは、今後どうあるべきでしょうか。
私は現在、教職大学院でスクールロイヤーの研究も行っています。その立場から学術的にはスクールロイヤーを「学校設置者の顧問弁護士とは別に、学校現場と継続的な関係を有する弁護士」と定義しており、3つの環境を整えることが重要だと考えています。
1つ目は、子どもに会って直接関わることができること。教育現場には、法律現場の常識では解決できないことがたくさんあります。当事者の子どもと会うことで解決のための参考情報が手に入るかもしれません。例えば、スクールロイヤーが学校の校務組織に定期的に参加して意見を述べるという画期的な制度を導入している学校もあります。このように定期的に学校にアクセスできる仕組みが必要でしょう。
2つ目は、保護者側も弁護士に相談できる制度をつくること。スクールロイヤーは学校設置者に雇われているので、保護者の依頼に応えることはできません。保護者用の窓口を設けている自治体もありますが、無料相談は初回だけだったり、同じ弁護士に継続的に相談できなかったりして利用しづらい。保護者がクレーマー化する原因の1つは、誰のサポートも得られないこの現状にもあると思うのです。