「スクールロイヤー」学校問題解決の悩ましい実情 「教員兼弁護士」が語る配置の理想形とは?

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いじめ、不登校、労働問題……解決に有効な領域は?

――スクールロイヤーへの相談が多い領域や、介入が有効な領域はありますか。

相談が最も多いのは保護者対応、次いで学校事故、生徒指導、虐待など。ちなみに昨今、教員のわいせつ行為が問題視されており、来年6月までに「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が施行される見通しですが、規定にあいまいな部分が多く条文解釈が求められる法律であるため、来年度はこの件で相談が増えそうです。

法律は被害者と加害者を決めたうえで話を進めるので、そこがはっきりしているケースは介入が有効です。代表的なのは、学校事故。一種の保護者対応ですが、事故後の対応手順や災害共済給付制度の案内、加害者との交渉などについて学校に助言します。それを踏まえて学校が保護者に丁寧に回答すると、円滑な解決に向かうことが多いです。

虐待にも有効です。児童相談所や警察の対応は、学校が連絡するよりもスクールロイヤーから連絡したほうが早い。また、児童相談所所属の弁護士と連携できると、スムーズに子どもを保護できる場合が多いです。

いじめも、被害者と加害者が明確なケースには有効。被害者が被害を受けているのに加害者がまったく反省していない場合などがあれば、スクールロイヤーは「対応しないとダメ」と学校に助言しますし、深刻な場合は調査委員会を立ち上げますから。ただ、最初に攻撃を仕掛けたのが被害者であるなど、被害者と加害者が明確に分けられないケースは対応が難しくなります。

実はいじめの相談は、スクールロイヤーの導入当初は多くなりますが、その後減少する傾向が見られます。スクールロイヤーの対応が先例となり、それ以降、学校現場が自分たちの判断で適切な対応ができるようになることが多いのです。また、スクールロイヤーは教員研修やいじめ予防授業も担当することが一般的で、そうした機会にいじめ対応の啓発を行っていることが効果を上げていると考えられます。

ただし、減少するのは軽微ないじめ相談。難しい案件は減少していません。スクールロイヤーへの相談は、いじめに限らず非常に扱いが難しいケースがほとんど。例えば、当事者の言い分がまったく食い違っているいじめ、貧困や精神疾患など複合的な問題を抱えている保護者と不登校の子ども、障害のある子どもへの対応などです。

しかし、現場が「このケースはスクールロイヤーの助言を聞いたほうがいい」と判断できるようになることは配置するメリットの1つだと思います。また、先例が有効に機能して相談件数が減っていくケースはいじめ以外にもあります。学校事故、保護者からの文書による回答要求や謝罪要求、教員の体罰・懲戒処分なども、一度スクールロイヤーが支援すると現場で対応できるようになります。この点も、スクールロイヤー配置のメリットと捉えています。

――解決が難しい領域はありますか。

生徒指導です。ブラック校則や違法な体罰などは介入が有効ですが、日常的な生徒指導の問題解決は、現場経験のないスクールロイヤーには難しい。教員がどんな意図を持って生徒指導に及んだのかという背景まで考慮できないからです。同様に、保護者が教員の説明の仕方に腹を立てている場合なども、臨機応変な解決策を示すことは難しいです。

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