フェイクニュースを生む「こたつ記事」とは何か デマやガセに騙されるのは読者のせいじゃない

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低品質なこたつ記事を根絶すれば、フェイクニュースの生成はだいぶ抑えられるはずです。ヤフーのニュースなんて、ネットの世界では7時のNHKニュースみたいなもんじゃないですか。責任があるわけです。そこに確認不十分なニュースを垂れ流しつつ責任ありませんと開き直って、巨額の利益を得るのっておかしくないですか。

ファクトチェックも意味がない状態

──一方で、フェイクニュース対策としてのファクトチェックやメディアリテラシーに対しては、疑問を呈されていますね。

ゴミは拾ったほうがいいし、ファクトチェック自体は大事な活動です。ただ現状は、工場がドバドバ汚染水を放出し真っ黒になった川の中でゴミ拾いするようなもの。メディアリテラシーも同じで、汚れた川から真水を取り出すには装置が要る。でもそれをみんなが持ってるわけじゃないので、下手にかき回して底からヘドロを巻き上げるだけ。

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今ファクトチェックやメディアリテラシーをやるのってそういうことだと思う。水質改善に着手し、もう少しきれいにしてから、個人がやれることをやりましょうという話。もう素人が扱える状態ではなく、順番が違います。陰謀論やフェイクにだまされる人を情報弱者と片付けるのは、すごくまずいと思います。汚染された水の飲み方にうまい下手はなく、全員が被害者なんだから。

インターネット業界においても、テレビにおけるBPO(放送倫理・番組向上機構)や新聞社の第三者委員会などオールドメディアが持つ浄化装置が必要だと思います。汚染者情報を第三者機関を通してプラットフォームや広告関連団体と共有し、広告も停止する。

広告規制は表現の自由を制限するという意見が出るだろうけど、連絡先もわからない運営会社への広告を切っても、表現の自由とは関係ないと思う。誹謗中傷やフェイクニュースで金儲けしている人を減らせば、真っ黒が茶色くらいにはなるでしょう。そうなればほかの手も打てる。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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