大人も子どももハマる「科学実験」動画の教育効果 アイデア満載、人気YouTuber市岡元気の正体

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子どもの興味も大人の関心も引きつける面白おかしさと、エッジの効いたアイデア満載のコンテンツの裏側にある、この真摯な姿勢が何よりも「GENKI LABO」の魅力だ。

教育格差を埋めるのが動画コンテンツの利点

もともと市岡氏は生き物が好きで、かつ理系科目が得意だった。大学進学に際しては、経済的な理由から学費を抑えながら生化学を学べる国立大学を探したという。

「小学生のころから算数や理科などが苦手なクラスメートに教えることが好きで、自分が教えた友達の成績がぐんぐん上がるのがとてもうれしかった」ことから、教員養成を主目的とする東京学芸大学を目指すことにした。

その一方、雑誌『小学六年生』(現在は休刊)で「読者モデルのようなことをやらせてもらった」ことをきっかけに芸能界にも興味を持ち、大学生活と並行して4年間、芸能系専門学校にも通った。

「小学校教諭一種免許状を取得したので、卒業後は小学校の先生という人生も悪くないと思ったけれど、俳優やタレントになることも諦めきれず、結局アルバイトをしながらチャンスを待つことにしました」

そのアルバイト先が、サイエンスショーやテレビ番組の出演・監修で知られる「米村でんじろうサイエンスプロダクション」だ。ここで2006年から13年間、サイエンスショーや科学教室、テレビ番組などの企画、監修、アシスタントなどの経験を積み、19年8月末に独立、教育系コンテンツを作成するYouTuberとして活動することにした。

「YouTubeの教育系コンテンツのよいところは、教育格差を埋めるところにあります。電波の届くところであれば、どこでも勉強できる。しかも、プロが子どもたちに興味が持てるようわかりやすくコンパクトにまとめているので、飽きずに見ていられるという利点があります。僕が小学校の先生だったら、1年間で科学の楽しさを伝えられるのは、教室にいる40人程度にとどまります。1回のサイエンスショーでも多くて1000人程度です。でも、YouTubeなら何万人、何十万人に、それこそ国境を越えて伝えられます。そのうえ企画、構成、演出、編集などは、すべて自分で考えたものを発信できる。こんなにワクワクすることはほかにない。そんな気持ちで独立しました」

独立してから半年後、新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の事態が起きた。リアルな実験教室やサイエンスショーはキャンセルや延期となったが、市岡氏の動画再生回数は伸びる一方だ。

「多くの人に見られているという実感が、コンテンツ作りのモチベーションになっています。毎週金・土曜日の2回、新作動画をアップするのは大変ですが、待ってくれている人がいるので、このペースを変えるつもりはありません」

後進育成で教育系コンテンツを盛り上げたい

コロナ禍で学校の先生が自分自身で動画コンテンツを作ろうとして、挫折したというのはよくある話だ。この状況を市岡氏はどう見ているのか。

「大学のクラスメートの約8割が現役の理科の先生です。彼らの話では、事務作業が多すぎて、授業用に面白い実験を開発したくても、そんな余裕はないという声が多い。時間がない先生方は、無理に自分でコンテンツを作ろうとせずに、僕のような教育系YouTuberの動画を利用すればいいと思います。子どもたちの関心を引くためにつかみの部分で動画を見せるのでもいいし、授業の最後に『今日学んだことを発展させると、こんなことができるんだよ』って、まとめの形で使ってもいい。家庭でも予習、復習の教材として使えますよね」

確かにじっくり温めたアイデア、しっかりと練られた構成、下準備、そして手間暇かけた撮影と編集作業、ときに専門家の監修がつくなど、科学実験動画のプロが手がけたコンテンツは教員、保護者にとっても利用する価値はかなり高いといえるだろう。

科学実験動画のプロが手がけたコンテンツは、授業でも家庭学習でも使う価値は高い

その一方で、GIGAスクール構想で配布されたパソコンや端末を積極的に使って、ICTを活用した授業にどんどんチャレンジしている先生もいるという。そんな先生には、教育系YouTubeの動画を見て、積極的にまねしてほしいと話す。

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