フィンランド「医療においても日本の先行く」理由 1960年から個人ID導入する国のスゴい医療事情

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新型コロナウイルスは日本の弱点をいろいろあぶり出してくれました。例えば、陽性者の集計。医師が手書きした陽性者発生届をファックスで保健所に送り、保健所はファックスの情報を手作業で入力していたと聞いてひっくり返った方は多いでしょう。

あれで日本の行政のIT化がまったく進んでいないことがバレてしまいました。いつ終わるともしれない混乱のなか、そうした作業を毎日強いられる現場の方々の負担たるや、察するに余りあります。がん検診も同じで、手書きの書類で管理されていて、せっかく病院で手術までおこなわれていても、その結果が自治体には届いていないのです。

翻ってフィンランドです。彼我の差は凄まじい。そもそも論として住民登録システムが稼働しています。日本のマイナンバーに当たる個人IDは1960年から導入され、給与や社会保障などと紐づけされています。病院での治療や処方箋などの情報もすべてデータ化されているので全国で共有が可能です。

日本にはない「先進的な医療インフラ」

がん検診においても、整備された情報インフラの利点がいかんなく発揮されています。検診関連データは自治体によって一元管理され、検診を受ける人の選定、検診の通知から実施、そして再検査から治療に至るまで、各段階での報告が医療機関の電子カルテから自動的にリアルタイムで反映されます。

検診結果に応じて、本人に「異常なし」または「再検査のお知らせ」が届きますが、単に「再検査ですよ」と伝えるだけのものではありません。「○○病院で○月○日○時に再検査を受けてください」と、再検査の場所から日時からすべてお膳立てしたうえでの案内だというのです。

フィンランドでは、こうした対応に「窮屈だ」「面倒だ」と反発する人は少なく、「高い税金を払っているだけはある」「段取りをしてもらって助かる」とほとんどの方が肯定的に受け止めているということです。

フィンランドのがん検診のあり方を、日本で即導入とはなかなかいきません。仮にシステムをそっくり導入できたとしても、日本人ががん検診を受けない「理由」を解決しなくては、検診の受診率の上昇は望めないでしょう。

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