子どもが描いた「絵が動く」今どき図工授業の斬新 ICTが表現の幅を広げ意欲的に学ぶきっかけに
やりたいICT授業を実現させるため、「MIEE」の扉を開ける
ICTを活用した図工の実践「ICT夢コンテスト2019」で文部科学大臣賞受賞、2020年3月には、教育界のノーベル賞といわれる「グローバルティーチャー賞」のトップ50に入選など、華々しい活躍を見せる岩本先生の源にあるのは、ICTへの愛だ。
「もともと描くことや作ることが好きだったのですが、中学生の時にPowerPointを初体験したことをきっかけに、パソコンで絵を描いたり、絵を動かしたりする楽しさに私自身がはまりまして(笑)。自分の作品づくりのツールとして、ICTを積極的に使っていました」という。
高等学校卒業後、三重大学教育学部学校教育教員養成課程美術教育コースに進学。教育実習の時に、図工の授業でICTを初めて取り入れた。

「5年生の授業で、画面が連続している複数の絵の束の端を素早くめくることで絵が動いて見える『パラパラ漫画』を扱ったのですが、『この題材ならICTを使うと楽しいだろうな』と。児童が描いた絵を1枚1枚スキャンしたり、デジカメで撮影したりしながらコマ撮りアニメにしました。今から10年以上前の話で、当時は専用アプリがなかったため、かなりアナログな作業だったのですが、鑑賞の時、子どもたちがすごく喜んでくれ、『作品をもっとつくりたい!』と大盛り上がりだったんです。図工にICTを取り入れると表現の幅が広がり、子どもたちが意欲的に学ぶきっかけになることを実感しました」
10年から東京都の図工専科教員として採用され、八王子市立館小学校、三鷹市立第一小学校勤務を経て、20年から新宿区立富久小学校に着任した。初任校時代から、木工作品をデジタルカメラで撮影して動画にするなどの実践を行ってきた岩本先生が、図工専科教員としてよりジャンプアップするきっかけとなったのが、18年にマイクロソフト認定教育イノベーター(以下、MIEE)に認定されたことだ。
MIEEとは、教育現場におけるテクノロジー活用を先導する教育者が集まり、マイクロソフトと共に新しい教育を作り出すコミュニティーであり、マイクロソフト公式のグローバルなプログラムである。MIEEに認定されると、実践用の機材や製品ライセンスの貸し出し、各種勉強会や公開授業などの支援が受けられる。
「ICTツールを活用した授業を行いたいのに、校内のネット環境やパソコン・タブレットの配備環境が整っておらず実現が難しい状況に出くわし、打開策を模索していたときにMIEEを知りました。認定されれば、マイクロソフトの教育チームから20台のパソコンと数台のルーターをレンタルできることを知り、『やりたい授業が実現できる』と思ったのです。教育ICTに携わる全国の先生たちと横のつながりが持て、交流できることにも魅力を感じました」
自らのパッションで、教育活動の幅を広げてきた岩本先生。高学年を対象に、プロが奏でるピアノ演奏を聴きながら「Viscuit」を用いて曲のイメージを動く絵として表現する授業を三鷹市スポーツと文化財団と協力して実践し、完成作品を地元のホールが開催するコンサートでプロの演奏に合わせて投影。学校の展覧会では、児童が制作した「Viscuit」の動画作品をPowerPointに挿入し、発泡スチロールで制作したお城にプロジェクションマッピングで映し出した。これらの取り組みが、先に記した「ICT夢コンテスト2019」「グローバルティーチャー賞」受賞につながった。
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