「日本初マイクラのプロ」が語る驚きの教育効果 タツナミシュウイチ「リアルとの接続が重要」

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そんな確信とともに教育活動を始めて間もなく、くしくもマイクロソフトから教育版マイクラの発表会に誘われる。そこで改めて教育的価値の高さを再確認したタツナミ氏は、マイクラのさらなる教育活用を模索。そんな中、ある海外事例が目にとまった。

「カナダでASD(自閉スペクトラム症)を持つ子どもたちと保護者がチームとなり、プレーヤーの安全性が保たれる設定をしたマイクラの中で共同生活をしたところ、子どもたちのコミュニケーション能力が向上した、というニュースを見たのです。日本も絶対に取り入れたほうがいい活用法だと思いました」

(写真:梅谷秀司撮影)

タツナミ氏はすぐに、つくば市立春日学園義務教育学校の特別支援学級でマイクラを活用していた山口禎恵氏(現在、つくば市立学園の森義務教育学校教諭)にコンタクトを取った。そして、「サーバーもワールドもすべて準備するので、特別支援学級の小学生に協力してほしい」と提案し、教育版マイクラによる1週間の実践を実現した。

その結果、普段は会話が苦手な児童たちだが、全員にコミュニケーション能力の向上が見られたという。詳細は「特別支援学級におけるコミュニケーション能力及び協働能力向上支援のためのMinecraft:EducationEdition マルチプレイワールドを使用した実践の内容と報告」にまとめられているが、クラスメート同士でも異学年でも協力し合う様子が見られ、相手を思いやる声がけなども多くあったという。

「マイクラはチュートリアルがないので、自力で探求して解決する力が求められます。しかも協働作業は、コミュニケーションを取らないと物事が進まないどころか、途中で命を落としたり掘り出したダイヤがなくなったりします。要は協働力の育成が期待できるわけですが、今回の実践で通常学級だけでなく特別支援学級でも役立つことがわかりました」

この実践は、つくば市内だけでなく、他の地域の学校でも導入されるようになってきているという。また、今もタツナミ氏は明治大学サービス創新研究所で研究を続けており、中学校の特別支援学級を対象とした実践の発表を近々予定している。

マイクラは好奇心のきっかけをつくるプラットフォーム

タツナミ氏は慶應義塾大学SFC研究所にも籍を置き、小中高生が自作のワールドを発表する「マインクラフトカップ」のアドバイザーと審査員を務めるなど、「デジタルものづくり」をテーマとした研究活動も行う。そのほか、全国のプログラミング教室や学校で出張授業を行うなど子どもたちと関わる機会も多いが、つねに心がけていることがあるという。それは、リアルとの接続だ。

「僕は、マイクラは好奇心のきっかけをつくってくれるプラットフォームだと思っています。例えばマイクラには鉱石がたくさん出てきますが、実際の玄武岩も黒いことやその理由を知っている子はあまりいません。教科書を使ってそこをわかるようにしてあげると、『すごい!』とみんな大盛り上がり。そのときの目の輝き方は半端ないです。

出張授業の後に保護者の方からも『子どもがよく自分で調べるようになった』といった連絡をよくいただきます。マイクラはリアルの再現に非常にこだわって作られているので、リアルとつなげやすい。そこを利用し、マイクラで動物を育てている子に動物園の飼育員に会わせるなど、現実社会とつなげて好奇心を育ててあげることが大切だと思います」

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