デジタル・シティズンシップ教育広がる納得理由 「情報モラル教育」でGIGA端末活用は進まない
このように世界でデジタル・シティズンシップ教育の普及が加速しているのは、フェイクニュースの問題も関係している。

法政大学キャリアデザイン学部教授、図書館司書課程担当。教育系出版社や週刊誌などの編集者を経験したのち、新聞社を中心に雑誌執筆者として活躍。1996年より法政大学教員。ユネスコのメディア情報リテラシープログラムの普及を目指すアジア太平洋メディア情報リテラシー教育センターおよび福島ESDコンソーシアム代表。基礎教育保障学会理事
(写真:本人提供)
「米国ではロシア発のフェイクニュースが大統領選に影響しました。21年1月には陰謀論やフェイクニュースを信じた前大統領の支持者が連邦議会議事堂を占拠する事件もありましたが、翌日には米タイム誌が『次の危機を止めたいなら、サイバー・シティズンシップ教育は国家的優先事項にならなければならない』というタイトルの記事を掲載するなど、社会全体で危機感が募っています。
フランスの憲法審議会やイタリアの超党派もフェイクニュースの報告書をまとめています。各国は国防問題として真剣に捉え、メディアリテラシー教育に取り組んでいるのに、日本だけが何もしておらず、その危険性すら誰も口にしません。日本が民主主義国家であり続けるためにも、メディアリテラシーの土台となるデジタル・シティズンシップ教育が急務です」
幸い、前述のように、国内でもデジタル・シティズンシップ教育に関心を向ける自治体が出てきている。SDGsやダイバーシティー&インクルージョンに取り組まなければならない関係から企業のニーズもあり、「デジタル・シティズンシップは今後、社会全体で語られるようになっていくのでは」と坂本氏は話す。関心の高まりを受け、今後は日本向けのオリジナル教材の制作を豊福氏らと検討していくという。
しかし、デジタル・シティズンシップ教育に取り組む学校が一部にとどまった場合、どうなるか。教育格差が広がるのはもちろん、「1人1台端末は文鎮化し、GIGAスクール構想そのものが崩壊しかねません」と、坂本氏は懸念する。すでにICT活用は格差が生じている。
「私は大学の授業でSNSを使った海外交流なども行いますが、基本すら知らない学生が多く、新入生にはSNSの使い方から教えています。一方、私立を中心に、先進的な高校はICT活用やデジタル・シティズンシップの育成ができているため、学生間で格差が開いている。これは大きな問題だと捉えており、教育界全体でデジタル・シティズンシップ教育に取り組むべきだと考えています」
(注記のない写真はiStock)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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