映像制作通じて「探究活動」する学校が増える理由 「ドキュメンタリー制作」で身に付く5つの力

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例えば、山﨑氏が協力した小中高一貫の国際バカロレア認定校・ぐんま国際アカデミーでは、LGBTQやコロナ禍の観光地など社会的なテーマを中心に制作に取り組んでいる。

「高校1年生が4人1組で自ら取材撮影を行います。週2時間の通年必修授業で、10分程度に完成させます。先生はあえて取材対象の選定や撮影のお膳立てなどはせず、生徒の主体的な取り組みを重視しています。子どもたちはやる気になれば、やりきる力があるのです」

ぐんま国際アカデミーでは社会的なテーマを中心にドキュメンタリー制作に取り組んでいる
(写真はぐんま国際アカデミー中等部・高等部 教諭 小田浩之氏提供)

ドルトン東京学園では「アート×職業体験」をテーマに、美術科とキャリア教育の横断的なプログラム開発を進めているという。期間は1~2カ月。中学2年生が、取材対象である会社や店の「仕事を知る」だけでなく、プロモーション映像制作という「仕事をする」。それらを通じた探究活動を目的としている。

一方、長野県のフリースクールOZ Field(オズフィールド)では、スクールでの日々の活動を自分たちで映像として記録し、定期的に保護者たちに披露する。そこには映像を通知表代わりにしようとする狙いもあるという。

「いずれも正規の授業で課題解決型のしっかりとしたドキュメンタリーを作っています。もしこうした事例をハードルが高いように感じるのなら、学校やクラス紹介、部活動のPRのようなものでもいいのです。映像制作をやろうとなると、現場の先生の心配事は、機材をそろえることとアプリの使用法ばかり。機材については支給されたタブレットでも、普段使っているスマホでも十分にできる。カメラや編集アプリの使用法については、生徒は知っているし、きっかけやコツ(あらかじめ完成形をイメージした構成を作るなど)を与えれば自分たちでどんどん調べて使えるようになる。いずれも高価だったり専門的でなくても、ドキュメンタリーの場合は、『荒削り』がリアリティーや臨場感につながるから、心配は無用です」

こうした映像制作の授業において大切なことは、子どもたちの自主性に任せること。そもそも子どもたちが大好きな動画だ。任せれば、成功する確率は高くなっていくと山﨑氏は指摘する。

「しかも、うまくいった事例を見ていると、先生は必ずしも作品の出来では評価していません。一連のプロセスや報告がしっかりできているか、5つの力が身に付いているかどうか。そこを評価しているのです」

現在、映像制作を導入している学校は私立校が中心だが、山﨑さんの元には教育委員会からも協力してほしいという要請が続々と届いているという。

「あくまで先生が主人公となって映像制作を実践すべき。映像のプロが子どもたちの前に立って指導すればヒーローになり、スポット的なイベントとしては盛り上がりますが、定着はしません。さらに私は公立校こそ、映像制作を導入すべきだと思っています。公立が変わらなければ、日本の教育は変わりません。何ができるのか。何が起こるのか。まだ見えない部分もたくさんあります。しかし、学校現場での映像制作はまだ緒に就いたばかり。まずは成功事例を作ることが必要です。ICT教育の可能性を広げていくためにも、映像制作の最初の一歩を踏み出してほしいと思っています」

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