本格始動したICT教育における課題と対策 教員・子どもが得られる効果とは
中でもICT教育は、外部委託することで単なる人手不足の解消だけでなく、専門性を取り入れやすい分野です。パソコンやタブレットといった機器導入のベンダーだけではなく、ネットワーク保守・運用やツール導入、ITリテラシーの研修なども民間の力が役立ちます。
さらに、書類作成やデータ管理といった校務の業務効率化自体も外部の力を借りることで、教員のさまざまな業務も効率化を見込むことが可能です。
理想的には、教員は児童・生徒と正面から向き合い、学習意欲や可能性を伸ばしてあげることが本来の職務です。授業やその準備以外で発生する業務について、個々の教員の課題とするのではなく、学校として向き合うことで抜本的な改善を図ることができます。
教員のITリテラシーが低いことへの対策:フォローアップ教育
教員は、OSやネットワークなどの専門的知識に詳しくなる必要はないものの、ICTを活用した子どもたちへの指導方法を身に付けていくこと自体は欠かせなくなってくるでしょう。
また、学校の教員だけでICT教育が進まない場合は、それぞれの状況などに合わせて、ICT活用教育アドバイザーやGIGAスクールサポーター、ICT支援員からの助言を活用あるいは検討するとよいでしょう。
ICT活用教育アドバイザー:国が手配する教育全般のアドバイザー。各教育委員会などに対して派遣あるいはオンライン上から環境整備やICTを活用した指導法などを助言・支援を行う。
GIGAスクールサポーター:各教育委員会が国の補助金などを活用して、募集・配置。学校における環境整備の設計や工事・納品対応、マニュアル作成などのICT導入における初期対応を行う。
ICT支援員:各教育委員会等が地方財政措置を活用して、募集・配置。日常的な教員のICT活用支援を行う。
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子どもたちの安心安全な利用への対策:ネットリテラシー教育
教員だけでなく、子どもが主体でネットリテラシーなどの情報活用能力を高めることも必要です。
ネットリテラシーとはインターネットを適切に使いこなすための能力ですが、何も知識がないと、例えばSNSでの炎上や犯罪などに巻き込まれる可能性もあります。とくに、地域や家庭によっては小学生・中学生のうちからスマートフォンなどの端末を持つケースも増えています。学習デバイス以外でもICT機器を使う可能性があるので、ネットリテラシーは生活をするうえでの必須科目ともいえます。
文部科学省では、1人1台端末の安心・安全な利活用についての情報を公開しています。学校から配布される各端末では、Webサイトやアプリの利用・閲覧制限、検索エンジンのセーフサーチといったコンテンツ保護を行っているため、ハード面において基本的には安心といえます。
ハード面での安全性管理と同じく、子どもたちにもインターネットの利便性と危険性の理解を促し、正しく利用する能力が必要ということをあらかじめ伝えることが大切です。加えて、重要な情報を外部に漏らさないといった、倫理面も含めた教育も必要です。
安定したネットワーク回線を保てるかへの対策:専門業者の協力
学校でのICT活用に欠かせない安定したネットワーク回線の構築は重要です。
とくにネットワークは、ICTの中でも比較的高度な知識が必要になるため、GIGAスクールサポーターなどの支援を受けながら計画を進めるとよいでしょう。
また、文部科学省では、配布端末のOSや校内ネットワーク整備に関するモデル例を「標準仕様書」として公開しています。こうした情報もネットワーク構築の参考になります。この標準仕様書を基に、専門知識に詳しい企業のサポートによって、各校に最適な環境整備をすることが理想的です。
具体的に検討すべき項目としては、想定されるアクセスに耐えられる通信機器の選定、学校や教室のレイアウトや活用シーンに応じた最適な中継機器の数や配置を考えてもらうことなどです。
また、導入後も専門会社からの定期的な点検などにより、日常的に安定して使えているか、使い方は適切であるか、回線に問題が生じていないかといったことを確認することが大切といえます。