本格始動したICT教育における課題と対策 教員・子どもが得られる効果とは

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4.教員のITリテラシーが低い

教員のITリテラシーが低いと、次のような問題に直面するおそれがあります。

・ICTの活用シーンが思い浮かばない
・機器やネットワークの仕様書を理解できない
・トラブルが起きたときの解決策がわからない
・教員のみでICT教育を推進することができない
・研修など、教員同士の知識共有が起きづらい

心理的な要因も含めて、こうした問題は、そもそもICT教育の導入の大きなボトルネックになる可能性があります。また、先に挙げた自治体間の格差や属人化といった別の課題にもつながります。

教員のITリテラシー向上に当たり、研修をはじめとした教員へのサポート環境を整えることが求められています。

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5.子どもたちの安全性

学校・自宅を問わず、子どもたちがICT学習を安心安全な環境で行うことができるかも課題です。

例えば、インターネットを経由した犯罪に巻き込まれるなど、ネットリテラシーを身に付けないままICT機器を利用することが、ICT教育そのものに疑問を向けられる原因にもなります。

ただし、そうしたリスクを避けるために「タブレット端末の持ち帰り禁止」「授業以外での使用禁止」など、利用を制限することにもデメリットがあります。例えば、機器・ネットワーク利用に関する家庭間の格差や、学校から見えないところでインターネット関連のトラブルが生じることなど、別の問題についても念頭に置く必要があります。

許容できる範囲でのリスクをあらかじめ想定し、児童・生徒が生活全般の中でICTに精通することがICT教育の理想形だという前提に立つことが重要です。

6.安定したネットワーク回線を保てるか

それぞれの現場で安定したネットワーク回線を保てるかも課題です。

基本的にICT教育はインターネットに接続することが前提です。また、学習用端末からインターネットへの接続は、Wi-Fi(無線LAN)を利用するのが一般的です。

授業時には、同時に数十人が一斉にインターネットに接続することになるため、全員が遅延などなく接続できるか、長時間使用した場合はどうなるかなど考える必要があります。また、それを学校全体で行う場合の通信のパフォーマンスについても考えられていなければ、逆にICTが学習に悪影響を与えるおそれもあります。

また、持ち帰ったタブレット端末を使って復習などを行う場合、Wi-Fi環境がない家庭もあります。こうしたことを想定し、端末単体で通信が担保できるセルラーモデルの導入を進める自治体もあります。

課題解決のための具体策

ここからは、ICT教育の課題解決のための具体的な対策を、上で挙げた6つそれぞれに考えていきます。

ビジョンや目的が明確でないことの解決策:ゴールイメージを描く

当然ながらICT教育の導入は目的ではなく、あくまでも手段です。

「ICT教育によって学校の環境を5年後、10年後どう変えられるか」「ICT教育によって、児童・生徒がどのようなスキルを身に付けて、どう社会に役立てるだろうか?」といったビジョンがあってこそ、具体的に取るべきステップや、段階的なゴールが明らかになります。

まずは各自治体や学校が、このゴールイメージを持つことが大切です。これを考える際には、文部科学省が公表する、学校におけるICT活用の事例が参考になります。

学校におけるICT活用について 文部科学省

 

自治体間の格差、学校格差の解決策:オンラインプラットフォームの活用

自治体間の格差、学校格差の解決策の一つとして、児童・生徒が自ら環境づくりを行うことも一つの解決策です。

例えば、子どもがオンライン学習のプラットフォームを使うことがその一つです。場所にとらわれない学習が可能になると同時に、子ども同士で学習意欲を高めあうことも可能になります。

オンラインコミュニティーを利用して子どもたちが成果を投稿することで、地域に関係なく子ども同士で学習の応援・質問・アドバイスができ、コミュニティーを広げながらICT活用の実践ができます。

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教員の校務が増えることへの対策:アウトソーシング

既存の仕組みにおける教員の労務関連の問題が明るみに出る中、ICT教育の導入段階では校務がさらに増えていくことは避けられません。予算の問題はありますが、外部へのアウトソーシングによって、教員の負担を軽減しながら、専門的知識・経験を学校内に取り入れることが一つの解決策になるでしょう。

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