高校中退「UWCから米ミネルバ大」の日本人の素顔 片山晴菜さんを変えた偏差値教育への疑問
だが、キャンパスがなく授業がオンラインとなると、学生同士のコミュニケーションが希薄になるなど課題が出てくるのではないかと懸念を抱く。実際、コロナ禍でオンライン授業が続く日本の大学では、学生間の交流がなく孤独感や疎外感を感じる学生がたくさんいる。また日本では、オンライン授業に対する否定的な意見もいまだに多く、自分のペースで効率よく学べるといった声がある一方、対面授業の内容をそのままオンラインで実施するものもあり、集中力が持続しないという声も多く聞く。

その点、ミネルバ大学は寮生活であり、一つ屋根の下で寝食を共にしながら学び合うことで、学生同士の共通認識や結束感がうまく醸成されているという。オンライン授業も、授業中の行動が成績に直結する評価方法に加え、少人数教育で学生の発言量を可視化。先生が効果的にファシリテーションを行って学生の集中力を保持するなど、さまざまな工夫がなされている。
「こうした授業の構造化こそが、オンラインにもかかわらず、教室の最前列にいるような臨場感を生み出しているのです。人間の自己統制能力、認知容量、それに注意力には限りがある。そこを前提とした授業や教授法が設計されていることがミネルバ大学の大きな特徴であり、他大学との違いだと思います」
そう話す片山さんは、この4年間でミネルバ独自の“脳の筋トレ”を通して、それまで自分ができないだろうと思っていたことができるようになったり、さまざまな視点から考えたりすることができるようになったという。入学当初は、ここまで使えるスキルだとは思っていなかったが、今は自分の人生をデザインしていくうえで、非常に有益だと考えているようだ。

片山さんの同期生は卒業後、大学院に進学したり、スタートアップ企業への就職や起業したりする人が多いという。自身は、いくつかオファーはあるものの、しばらく海外で過ごしながら、今後は既存の価値観を再定義できるような仕事をしたいと語る。
もともと、ずば抜けた知的好奇心と、その興味を徹底的に追求する探求心を持つミネルバ大生。そこに課題を発見し、具体的かつ実現可能な解を見いだして、人を巻き込みながら解決する“脳の筋トレ”を続けた卒業生たちだ。いったい社会でどんな活躍を見せてくれるのか。それはデータに基づいたエビデンスのある教育手法の成果を見るいちばんの説得材料になりそうだ。
(写真はすべて片山さん提供)
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制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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