――挙手制にすると、人気のない掃除場所は人手が不足しませんか。
どんなに人数が偏ろうとそのまま希望どおりにやらせます。その代わり、掃除が終わった後に必ず振り返りの時間を設けます。すると、「人が多すぎてやることがない」「うちは人がいなくて時間内に終わらない」という意見が出てくる。そこで僕が「これはみんなで考えないといけないね」と言うと、子どもたちは譲り合って調整していきます。こうした経験が、社会に出てから生きてくると思うんですよね。
現在持ち上がりで2年生の担任をしていますが、集中すべき時間に騒がしくなってしまった際、「みんなの学ぶ権利を奪っちゃ駄目なんだよ」なんて言葉が子どもから出てくるようになっています。先日はボールの片付けを押し付けられた子に、心配して付き添ってあげた子がいました。みんなが安心して過ごすためにはどうしたらいいのかを子どもたちなりに考えてくれているのかなと思います。
これまで教育現場では「子どもたちは未熟であり、教員によって教えられ成長する存在」という認識の下、知識伝達型の一斉授業や担任主導の学級経営が行われてきました。しかし、僕は「子どもたちは、自らの体験とその振り返りを通して気づきを得る中で、つねに学び続ける存在である」と考えます。新学習指導要領もそういった自律的に学ぶ子の育成を目指していますよね。学校や教員は子どもたちを「小さな大人」と捉えて権利を保障し、権利を有していることも伝えていくべきではないでしょうか。

1978年生まれ、北海道出身。東京都の公立小学校教員として14年間勤務。2016年、主に病気休職の教員の代わりに担任を務める「フリーランスティーチャー」となる。これまで公立・私立合わせて延べ11校で講師を務める。NPO法人「Growmate」理事としてマーシャル諸島で私設図書館建設にも携わる。近著に『マンガでわかる!小学校の学級経営 クラスにわくわくがあふれるアイデア60』(明治図書)
(写真:田中氏提供)
(文:編集チーム 佐藤ちひろ、注記のない写真はiStock)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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