「無自覚の恐怖」しつけと体罰の境界とは? 法改正から1年「体罰は本当に無くなったか」
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、回答者の約96%は「子どもと過ごす時間が増えた」「自宅にいる時間が長くなった、外に出る機会が減った」など、何らかの変化があったと答えている。この結果から、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、「コロナ禍で、日常の子育ての困難さがより増している」とみている。
体罰は、身体への苦痛に限ったものではない
今回の調査では、子どもたちにもアンケート調査が行われた。大人と子どもそれぞれに、「子どもの権利について知っているか」を尋ねたところ、大人のほうが知っている人が多かったが、その内容について知っている人は子どものほうが多かった。
さらに、「子どもの意見を聴き、子どもと一緒に判断すべき」と考える大人は、体罰を容認しない割合が高いことも明らかになっている。その一方で、なんらかの体罰等を受けた経験があると答えた子どもは38.7%いた。
子どもを傷つける行為は、身体に苦痛を与える体罰だけではない。厚生労働省は児童虐待に該当するものとして、「身体的虐待」「性的虐待」「ネグレクト」「心理的虐待」の4つを挙げている。令和元年(2019年)度に児童相談所に寄せられた虐待相談の内訳を見てみると、19万3780件のうち、最も多いのは心理的虐待の10万9118件で56.3%を占めている。子どもの心身を傷つける行為、成長を阻害する行為は虐待であることを大人は意識する必要があるといえるだろう。
今回の調査結果を受けて、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは以下の4つの提言をまとめて発表した。
① 体罰等に関する調査を国レベルかつ継続的に実施し、子どもに対しても実施すること
② 子どもに対する体罰等を容認しない社会をつくるために、効果的な啓発活動を推進すること
③ 子ども・子育て世代への支援策を拡充し、子育てに関連する公的予算を増幅すること
④ 子どもの権利を、大人と子ども自身へ啓発、普及、教育していくこと
虐待を受けずに育つことは、子どもの権利だ。子どもにも基本的人権があることを広く知らしめ、大人が子どもの意見によく耳を傾けること。そのためには、子ども自身はもちろんのこと、子育て世代をしっかりと支えていく仕組みと施策が必要だ。コロナ禍で日常や社会が大きく変化する時期だからこそ、意識的な取り組みが必要となるだろう。
(写真:iStock)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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