「無自覚の恐怖」しつけと体罰の境界とは? 法改正から1年「体罰は本当に無くなったか」
3割の親がやってしまっている「お尻をたたくこと」
法改正などを経て、今では約6割の人が「いけないこと」と理解している体罰。しかし、その意識には矛盾点も見える。
今回の調査では、体罰の具体的な内容に関する質問もあった。「こぶしで殴る」については93.2%が「決してすべきではない」と答えたのに対し、「お尻をたたく」のを「決してすべきではない」と答えたのは48.7%だった。「他に手段がないと思った時のみすべきである」(37.4%)を加えると、約半数の人が「すべきである」と考えていることが見て取れる。
実は、今回の調査では、2万人への意識調査に加えて、子育て中の1000人を対象とした実態調査も行い、過去3カ月にしつけのために子どもにした行為についても聞いている。それによると、「こぶしで殴る」は95.1%が「全くなかった」と答えているが、「お尻をたたく」では「全くなかった」と答えた人が70.8%で、約3割の人が「過去3ヶ月にしつけのために1回以上、子どものお尻をたたいたことがある」と答えたのだ。
体罰はいけないことだと理解しながら、「お尻をたたく」ことは容認し、実際に行われている。その理由について、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは「今回の調査ではその理由までは確認できていないが、お尻をたたくことも体罰の一つだということが理解されていないのではないか」と話している。

1000人を対象にした実態調査では、子育てに関する状況と体罰などの実態との関係についても調査。「子どもの言動に対してイライラする」「孤独を感じる」「育児、家事、仕事の両立が難しいと感じる」「家に引きこもり、子どもを連れての外出が難しい」など、日常の子育てに困難がある人は、過去に子どもをたたいたことがある頻度が高いことも明らかになった。
子どもをたたいてしまうのは、親自身の育った環境と必ずしも関係があるわけではないようだ。子どもの頃にたたかれた経験がまったくない人でも、自身の子どもを1回以上たたいた経験があると回答している。
たたいたり、怒鳴ったりせずに子育てをしたい。多くの親はそう思っているだろう。今回の調査でも、実際にそうしている人は46.4%いた。一方で、「そうしたいが実践は難しい」と答えた人が30.9%、「たたいたり怒鳴ったりすることはあるが、しない方法があれば知りたい」と答えた人が16.7%いるのが実情だ。