2週間で授業一変「奈良市GIGAスクール」の全貌 奈良県内の連携で「3カ月200回の研修」も実現

結果的に、同市では「動画ばかり見て困る」といった不満は数件で、その数件の保護者も主旨を話せば理解を示すという。また、「外部のプログラミング講座に参加するときに端末を使っていいか」といったポジティブな問い合わせが多く、端末操作などの問い合わせ対応を担うNECのヘルプデスクでも今のところ大きなトラブルはないという。
教育データ活用にも期待

大手SIerを経て、2013年より奈良市役所勤務。現在、奈良市教育委員会事務局 教育部学校教育課 情報教育係 係長。奈良県域GIGAスクール構想推進協議会調整部会会長。20年より奈良市教育情報セキュリティーアドバイザー、文部科学省ICT活用教育アドバイザー委員
奈良県は、全国でも珍しく、以前から統合型校務支援システムを県域で共同運用をしているが、GIGAスクール構想を機に「Google Workspace」の県域共同運用も開始した。これにより、教員は異動しても新たなツールに慣れる手間がなくなったほか、「県内の教員同士で授業づくりの相談がしやすくなった」という声もよく聞かれるようになったという。
また、文部科学省と総務省の「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」のモデル地域である同市は、教員による学習指導や生徒指導等の質の向上などを図るため、17年度から校務データや学習データ、児童アンケートなどの投稿・分析に取り組んでおり、学び残しの予防や課題の早期発見、教員同士の学び合いの促進といった成果を上げてきた。
今後は、Google Workspaceの県域共同運用も加わったことで、より広い教育データ活用が期待できる。「個人情報保護やセキュリティー上の対策、学校・児童生徒・保護者の理解は必要ですが、今後は傾向分析にとどまらず、今まで以上に児童生徒1人ひとりに最適な対応ができるようになる可能性が高いと考えています」と、谷氏は話す。
「ICTに苦手意識を持つ先生は多く、奈良市にもきっとまだ不安のある先生はいるでしょう。でも、子どもたちが生き生きと端末を活用する姿を見て、挑戦しようというマインドになってくれるのではという期待もあります。そんな流れができてくると、子どもの自律的な学びが加速していくはず。GIGAスクール構想は一斉に取り組んでいるわけですから、まずは各学校が走りながら考え、困ったことがあったら互いにシェアして進んでいくことが大切だと思います」
(文:編集チーム 佐藤ちひろ、写真はすべて奈良市教育委員会提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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