2週間で授業一変「奈良市GIGAスクール」の全貌 奈良県内の連携で「3カ月200回の研修」も実現

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約200回の研修が実現した訳

20年9月から年末までに約200回開催した「先生応援プログラム」という県主催のオンライン研修も端末の活用を後押しした。「端末は、県と県内のほぼすべての市町村で共同調達したのですが、研修も協力し合って共催したのです」と、谷氏は説明する。

今回、県の共同調達により9割の学校がChromebookを選んだため、Googleの自治体向け無償プログラム枠を多く使えることになった。この枠を活用してレベル別の研修を組み立てたほか、「Adobe Spark」やロイロノート・スクールといった導入ソフト会社の協力も得て入門講座を設けたり、指導主事による「セキュリティーポリシー」「他校の取り組み」などの講座も作ったりして内容の充実を図ったという。

これらの研修への参加は任意だが、県内の教員が全員受講できるよう、すべてオンラインで実施。教員の勤務スタイルに配慮して夕方から1時間ほどの講座にし、一部はオンデマンド配信も行っている。

「人気講座は100人以上集まります。従来の集合研修よりも圧倒的に参加者は多く、若手もベテランも負担なく受講できると好評です。奈良県立教育研究所に事務局を担ってもらったり、文部科学省のICT活用教育アドバイザー派遣事業を通じて講師に来てもらったり、『合わせ技』で取り組んでいますが、県内の連携による珍しい取り組みだからこそ、いろいろな人が興味を持って支えてくださっているのかなと思います。今後は他県との合同研修も検討しています」

1日300件の「パスワード失念」を乗り越えて

2月末、筆者は東京都のある自治体に住む保護者からこんな話を聞いた。

「隣の小学校では『授業で使うまで保管しておいて』と各家庭に端末が配られましたが、子どもは家でYouTube見放題とのこと。うちの子の学校も間もなく端末の持ち帰りが始まりますが、ルールや故障時の対応などの説明がなく不安しかありません」

こうした類の混乱は今、各地で起き始めているようだ。奈良市も基本的に毎日端末を持ち帰る運用にしているというが、保護者への説明はどのように行ったのか。

「まずは学び方が変わっていくというGIGAスクール構想の意義を説明した資料を作り、学校を通じて配りました。持ち帰りに関しては、AIドリルの『Qubena』など何らかの課題を出すような運用にしましたが、各学校の校長先生ご自身の言葉でどう取り組むのかを保護者に説明するようお願いしました。『とりあえず持ち帰らせる』のではなく、学校が方針をしっかり伝えたうえで早めに授業で活用を始めれば、保護者も不安は感じにくいと思います」

毎日端末を持ち帰り、家庭学習に活用

利用ルールは緩い。「大事に使うこと。有害サイトやSNSを制限するフィルタリングは解除しないこと」を基本とし、ルールの追加は各学校に任せている。

「ただし、端末が日常使いの文房具になるというゴールは意識してほしいと学校にお話ししています。メジャーなサービスには慣れたほうが安全だと思うのですが、学校や保護者の方が懸念されることもあると考えます。SNSの活用も含め、今後議論を進めていきたいです」

こうした方針から、パスワードも小学1年生から自分で管理させており、忘れた場合は教育委員会で初期化する運用にしている。当初は多い日で1日300件ほど連絡がきて青ざめたそうだが、毎朝ログインするなどの工夫を奨励した結果、ほとんど問い合わせがなくなったという。「学校はパスワードを集めて管理したいと思うかもしれませんが、それは家の鍵を集めるのと同じ。大人が勝手に子どもの限界を決めず、まずはやらせてみるということも大切ではないかと思います」と、谷氏は話す。

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