なぜ今、日本に増える「ボーディングスクール」 黒船来航で日本の教育はどう変わっていくのか
「新たな取り組みが増えていることは、時代にキャッチアップした学びが必要とされている危機感の表れだと考えられます。全寮制であるボーディングスクールの最大のメリットは、学業ならびに学生生活に没頭できる環境が整えられているということ。生徒たちは、起床するとまずヨガやランニングなどのアクティビティーをこなし、その後に朝食を取ります。午前中の授業が終わったら昼食を取り、お昼休みはクラブ活動に取り組む。午後のカリキュラムを終えて寮に帰ったら、ハウスマスターの下で宿題をこなします。合間に季節の行事や誕生日会などのイベントもあり忙しく、自由な時間は1日1時間もないかもしれません。
生徒の活動には、それぞれの専門家がつきます。先生は授業が終わると帰宅し、放課後の部活動にはそれぞれ専門のコーチがつき、宿題は寮のハウスマスターが見るというように、細かく分業制になっているのですね。日本の学校教育では先生がすべてを見ていますが、ボーディングスクールでは、先生は授業のみを担当し、それ以外は専門家にアウトソーシングできるシステムが作られています。そうすることで、先生も疲弊せず、生徒たちが学業や、学校生活に集中する体制を整えられる。教育だってアウトソーシングしていいんです。親にとっては、子どもを全寮制に通わせることで、子育ての一部をアウトソーシングすることになりますが、子どもにとっても独立心がつき、親子がそれぞれの人生を生きていくことができる。すべてを家庭や学校で抱え込むのではなく、適切なアウトソーシングをしてプロフェッショナルに委ねるというのは、生徒も親も先生も、皆が疲弊しない新しい教育の分業システムだと思います」

(写真:村田氏提供)
日本の学校教育も外的刺激で変化していく
ボーディングスクールをはじめとした、特色のあるインターナショナルスクールが日本に進出することで、日本の学校教育も刺激を受け、活性化し成熟していくはずだと村田さんは語る。それは同時に、子どもたちにとっては選択肢が広がることも意味する。例えば、日本の学校に通いながら、日本と海外2つの学位、ダブルディグリーの取得に挑戦することも可能だ。
「これからの子どもたちは、社会の変化に合わせて、どう自分らしく生きていくか、という力を身に付けることが必要です。そのために、何を学べばいいか。どこで学べるか。例えば、パティシエになりたいという子がいたとしたら、これまではお菓子を作る調理技術やお店の作り方を学べばよかった。でも今の時代はそれだけでは足りないでしょう。まずはパティシエという職業がなぜ、世の中にとって必要とされているのか、それが社会に及ぼす影響、チョコレートの原料となるカカオが、どこの国でどのように作られて、どうやって私たちの手元に届くのか。原産国の労働環境や社会問題にまで考えを巡らすことができる、複眼的視野が求められています。調理技術そのものもテクノロジーの進化によって日々変化するでしょう。つねに変化する社会に、上手にキャッチアップできる柔軟性がこれからは必要とされます」