国鉄の「迷」特急185系、モーター音うならせ降板 ダイヤ改正で「踊り子」定期列車からついに引退

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後に185系ではリニューアルが行われ、座席はリクライニングシートに交換されて特急型車両としての面目を一新するが、特急型なのに窓が開く構造なのがいまどきめずらしい。

車内設備の話も含め、185系と117系は比較の対象とされることの多い車両だが、両者とも走行関係の機器や台車は同じものが使用されている。国鉄では、機器の共通化を前提とした車両設計が行われ、電車では特急形・急行形・近郊形で同じモーターを使っていたが、モーターと車輪の間にある歯車を変え、特急形では速度が出るように歯車の比率を小さく、頻繁に加減速を行う近郊型では歯車の比率を大きくして加速性能に力点を置いていた。

117系は新快速向けということで近郊形の車両なのだが、185系も特急型の車両ながら近郊形の性能としていた。先の通り、普通列車でも使用するからだ。この結果、大きな歯車の比率としながらも高速で走ることになり、モーターの回転数が大きくなって大音響となる。185系の最高速度は時速110kmと、当時の特急型が時速120kmで走っていたのと比べても遅いのだが、音が大きいために豪快な走りに聞こえてしまうのだ。

185系の引退間際ということで、書店に行くと185系の本がいくつか並んでいるが、本を紹介するポップに「MT54の咆哮」という文字を見つけた。MT54とは185系や117系など、数多くの国鉄の電車で使用されているモーターの形式なのだが、ものすごい音を立てて走ることで「咆哮」と賛美されているわけだ。

特急から普通列車まで活躍

185系は急行列車や普通列車でデビューし、その後特急に格上げされたため、登場当初は急行での活躍が目立っている。これは、既存の急行型電車に交ざって使用しながら185系の増備を進め、ある程度数がそろったタイミングでダイヤ改正が行われ、急行型を引退させて特急に格上げしたためだ。急行での活躍は短期間で、1年にも満たないために運転開始年と終了年が同じ年になっている。

1985年から新特急という列車が登場したが、これはダイヤ改正で上野発着の急行が特急になってしまったために、185系を使用した列車を新特急として料金を引き下げ、割高感を抑えたものだ。新特急は停車駅の多い列車でもあったために、手軽に利用できるようにしたという事情もある。だが、後に近距離の特急料金を引き下げたこともあり、新特急の意義がなくなって2002年には特急に統合されている。

185系は主に伊豆方面と上野発着の列車で使用されたが、伊豆方面の特急が踊り子のままで変化がないのに対し、上野発着の列車では利用者の獲得を目指して列車設定の試行錯誤があり、加えて新幹線に列車名を譲ったこともあって、列車名の変化が激しい。

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