コロナ禍で激変!大学「学習履歴の活用」最前線 DX推進で入試も就職も合理的選考が可能に

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また、教員の経験と勘、教員との相性といったあいまいな要素に左右されがちだった教育に科学的エビデンスが持ち込まれることで、公正に個別最適な学びが実現できるようになるという。教育体系や入試のあり方も科学的分析に基づく議論が進み、今後の学習指導要領改訂における政策決定の根拠になるなど、「社会的メリットは非常に大きい」と安浦氏は話す。

エビデンスを示し社会的コンセンサスを

学習履歴データベースの活用はすでに民間分野で進んでおり、安浦氏は「履修データセンター」という会社の例を挙げる。同社は、独自のシステムを使い、新卒採用の求人に応募してきた学生の履修履歴を閲覧できるサービスなどを企業に提供している。

安浦寛人(やすうら・ひろと)
2008年~20年9月まで九州大学理事・副学長。現在は同大学名誉教授、財団法人福岡アジア都市研究所理事長、JMOOC副理事長、元日本学術会議会員(現在は連携会員)、文部科学省の種々の委員などを務める。専門は情報工学と集積回路設計
(写真:安浦氏提供)

「面白いのが、学生たちの履修履歴をデータベース化し、大学の各講義の成績分布もわかるようにしている点。これにより『この学生はA評価が多いが、履修しやすい講義ばかり取っている』といったことが見えてくる。応募者の成績を客観的に判断できると評判を呼び、提携企業を増やしているそうです」

こうしたことからも、社会システム基盤として学習履歴データベースを構築するには、「企業との接点が多い大学から進めていくのがいちばんスムーズでは」と、安浦氏は言う。大学で学習履歴のデータベース化が完成すれば、高大接続という流れから高校にも波及し、一気に中学校、小学校へと整備が広がっていくのではないかと考える。とはいえ、そこに至るまでには課題もある。最も大きな壁は社会のコンセンサスだ。

「マイナンバーが普及しないのは、目的とメリットが国民に明確に示されておらず、社会的コンセンサスを得られていないから。国が公共の財産として教育データを活用してよりよい社会を目指すなら、科学的エビデンスをもって学習履歴のデータベース化の有意性を説くべき。医療データと同じくセンシティブなデータなので情報漏洩による差別など懸念事項も洗い出し、プライバシー保護をルール化するなどして、社会的コンセンサスを得る努力をするべきです。

データベース構築の技術的な問題はすでにクリアしており、予算もGIGAスクール構想のように4000億円もかからず、500億円くらいでできるはず。GIGAスクール構想がうまく進むのかという心配もありますが、21年秋にはデジタル庁もできますし、教育のニューノーマル化が叫ばれる今はチャンスです」

(注記のない写真はiStock)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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