クラスに2、3人?学校のLGBTQの「現実」 教員は、ポジティブな「肯定」を伝え続けるべき

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もう1つの「窓口の開放」は、面談の機会を設けることだ。必ずしも、LGBTQとひも付ける必要もなく、無理に話をさせる必要もない。「先生に話してみようかな」という子どもたちの思いの受け皿になればいいと鈴木氏は話す。

「子どもたちが先生にやってほしいこと、やってほしくないことをきちんと話せる状況をつくるということです。もちろん、面談を設定したからといって、子どもたちがすべてを打ち明けてくれるとは限りません。私は、クラス担任をしていたとき、年に3回個人面談をしていましたが、『今学校でいちばん楽しいことは?』『今学校でいちばん困っていることは?』『先生にしてほしいことは何?』の3つだけを聞くようにしていました。子どもたちが抱えている悩みはそれぞれ異なりますので、こういう対応をすればいいという答えはありません。むしろ、LGBTQに特化して考えず、一人ひとりに向き合うことが大切でしょう」

外部リソースも積極的に活用すべき

子どもたちにとっての「窓口」は、担任の教員である必要もない。スクールカウンセラーなど学校外のリソースも積極的に活用するべきだと鈴木氏は主張する。

「学校の先生は、何でも自分でやろうと頑張ってしまうところがあります。でも、先生にわかってほしいという子もいれば、先生にだけは言いたくないという子もいるんです。担任の先生には話さず、スクールカウンセラーだけにカミングアウトしたという事例もあります。脳性マヒを持ちながら小児科医として活躍する東京大学准教授の熊谷晋一郎先生が、『自立とは依存先を増やすこと』とおっしゃっていますが、学校の先生もいろいろな人に頼るべきだと思います」

鈴木茂義 氏(すずき・しげよし)
公立小学校非常勤講師、自治体相談員、上智大学文学部非常勤講師。専門は特別支援教育、教育相談、教育カウンセリングなど。文教大学教育学部卒業後、14年間の正規小学校教諭勤務を経て現職。LGBTQなどの情報発信を行うホスピタリティー施設の設置や、多様性に関するさまざまなイベント・コンテンツの提供を目指すプロジェクト「プライドハウス東京」(https://pridehouse.jp/)にも参加。同プロジェクトは、日本初の常設大型総合LGBTQセンター「プライドハウス東京レガシー」を2020年10月にオープンしている。鈴木氏の心のオンライン相談はこちら、連絡先はこちら

実際、現時点で学習指導要領には「性の多様性」についての記載はない。2020年度から、一部の保健体育の教科書に盛り込まれたものの、適切な接し方や教え方が学べる公的資料は多くない。関連研修の実施に力を入れている自治体もあるなど、LGBTQについて学ぶ機会は増えているものの、教員や教員養成課程の学生たちが必ず学ぶべき研修とはなっていないため、どうしても認識に格差が生じている。だからこそ、教員が1人で解決しようとするのではなく、外部と連携したり情報交換をしたりするのも1つの方法だという。

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