湘南学園はなぜ「ESD」と「BYOD」が根付いたのか 前例がない中、挑戦を「正解」に変えるには?

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生徒たちが愛着を持ち、文房具として端末を使うにはどうしたらいいのか。その答えが、BYODへのシフトだった。しかし、ここからも大変だった。

保護者へBYOD導入を伝えたところ、「360度全方向から矢が飛んでくるような状態になりました」と、小林氏は振り返る。「貸与のiPadを使い続けると思っていた」「突然端末を準備しろというのは乱暴では」といった厳しい意見も相次ぎ、問い合わせ専用のメールアドレスを作ったという。

「学校が突然言い出したことですから当然です。不安や不満にふたをせず、すべてを受け止め1つひとつに対応していきました」と、山田氏。とくにこの時代において文房具として端末を使うことの重要性や、生徒たちが端末導入をどう捉えているかなどについて丁寧に説明していったという。

「生徒にとってはナチュラルな状態になっただけ」

小林勇輔(こばやし・ゆうすけ)
入試広報主任、ICT副主任

こうして何とか19年春からBYODを始動。その後の状況は前述のとおりだ。ちなみに当初配ったiPadも、端末を忘れた高校生に貸し出すほか、中学生の授業で使うなどフル活用しており無駄にはならなかったという。現在の様子について小林氏はこう語る。

「ICTで生徒たちが変わったわけではない。大人がデジタルを管理や規制で遠ざけていただけで、スマホを日常的に使う生徒たちにとってはナチュラルな状態になったのだと感じます」

ICTで変化があったのは、教員のほうかもしれない。

「前例がない中、『挑戦』をみんなで協力して『正解』に変えていった。BYODを担当した先生たちは、あらゆる挑戦へのハードルが大きく下がったと感じています」(山田氏)

18年に教員の業務を「G Suite for Education」に切り替えたことで効率化も進んだ。出欠と成績はオンプレミスで管理しているが、例えば会議資料はドライブで、会議予定はカレンダーで共有。業務連絡はハングアウトで行い、資料はドキュメントやスプレッドシートで作成する。「紙と異なり、検索すればすぐ資料が見つかるのがいい」と、山田氏。とくに教員の間で好評なのは共同編集機能で、会議の議事録作成が効率化できて時短になったという。

このように全教員がG Suite for Educationに慣れており、BYODによりICTを授業に活用している先生も多い。そのため、コロナ禍の休校中も教員はほぼ完全在宅で、スムーズに全学年にオンライン環境をつくることができたという。

「実は特活が始まった頃も学園内で賛成派と反対派に分かれるなどして大変だったんですが、子どもたちの成長を見る中でしだいに大事な教育だということが共有されていきました。BYODもいろいろありましたが軌道に乗り、成果を実感しています。今後も自由に端末でいろいろな使い方をしていってくれたらうれしいです」(伊藤氏)

(文:編集チーム 佐藤ちひろ、写真はすべて湘南学園中学校高等学校提供)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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