町田第五小、3年間で公立先端校へ躍進の理由 協働学習ツールは「対話の深化」を加速する

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「挑戦も失敗も、大いにOK」

町五では、まずはつてをたどり大学からiPadなどを80台借りてきた。「教員は忙しく、手元になければ使わない。まずは自由に端末が使える環境整備が大事」(五十嵐氏)だからだ。しかし、環境が整ってもICTに抵抗のある教員はいるのではないだろうか。

「使ったことがなければ当然です。教員はまじめですし、失敗してはいけないという文化があるのも事実。だから私は、『挑戦も失敗も、大いにOK』『楽しめたら使おうか』という気軽な雰囲気づくりを心がけています」と、五十嵐氏は語る。また、児童と一緒に学んで成長しようというスタンスも大事だという。

学び合う風土が形成され、今年は3年生が1年生に端末の使い方を教えてあげた 

「『先生を助けてね、やってみようか』なんて言って始めると、『うん、やってみよう!』『こうするといいんじゃない?』といった感じで子どもはすぐにICTに溶け込みます。教員もやってみると協働的な学びの効果がわかるので楽しくて仕方がなくなる。最初は手を挙げた教員から使い始めましたが、しだいに端末の取り合いになっていきました」

18年度は同市の方針により教員にChromebookが配備され、モデル校ということで児童用にも40台が配られた。ところが、それで満足する五十嵐氏ではなかった。1人でも多くの児童にICTを体験させたいと、企業に頼み込み、グーグルからChromebookを、NTTドコモから通信用のドングルを複数クラス分借りてきたのだ。さらに19年度は、同市から1学年分の端末が追加配備され、合計で「1学年に1クラス分」の端末がそろったが、それでも貸出票はすぐ埋まって順番待ちが続いたという。「もっと日常的に使うためには、1人1台が絶対に必要だと思いました」と、五十嵐氏は言う。

コロナ禍で、6年生が見せた驚きの成長

そんな矢先、コロナ禍で休校となった。「いくら教員がいい授業を配信しても、児童が動かなければ受け身の授業になる」との考えから、動画配信は行わなかったという。協働学習ツールのG Suiteの活用が進んでいたこともあり、休校中の後半は6年生を優先に端末を貸し出して問題解決型の授業を展開した。例えば、毎日スプレッドシートやスライドを使い、全員でアイデアを共有する時間を設けた。課題を自身で設定し、カレンダーで学びの計画を立てることにも挑戦させた。

すると、6年生に大きな変化が起きた。Classroomの掲示板であるストリームに自由に意見交換できる場を用意したところ、何と児童たちは自主的に書き込みのルールについて話し合いを始め、スライドで運営マニュアルを作成したという。

町五は、これまで「自律する力」と「異なる他者と協働して問題解決する力」の育成を目指し、児童主体の授業を行ってきた。その中にICTを取り入れてきたわけだが、こうした学びがベースにあったからこそ、児童は緊急時においても驚きの成長を見せたのだろう。

ある日の授業風景。1年生でも端末を違和感なく使っている

町五では、全学年で問題解決型の授業がある。例えば1年生であれば、校外に出て「見つけた秋」を端末で撮影し、各自がその写真をもとにグーグルの描画キャンバスで作品を描く。そして作品画像を同じくグーグルのジャムボードに貼り付け、さらに作品の感想を付箋で貼って共有する、という内容だ。

この中で、プレゼンテーション資料を作り込むスキルが必要になるため、データをグラフ化するなどの基礎は3年生からどんどんやらせているという。ローマ字入力も3年生を強化学年としていたが、今年からは2年生もローマ字入力の習得に取り組んでいる。「身近に端末があるなら、できる時期からやればいいのでは」という意見が2年生を受け持つ教員たちから出たからだ。ほか、1年生からビジュアルプログラミング言語のViscuit(ビスケット)を楽しむなど、「やって無理ならやめればいい。できるならやってみよう」という発想で、全学年が日々新たな学びに挑戦しているという。

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