知的障害のある人を支援するという関係性に無理がある
そんなヘラルボニーは、全国の社会福祉施設や団体との提携によって2000点以上のアート作品のアーカイブを持つ。彼らが起点となって企業や社会と、知的障害のあるアーティストたちを結び、企画ライセンス事業など、さまざまなビジネスを生み出しているところに大きな強みがある。
「アート作品が高いレベルであることは言うまでもありませんが、ダイバーシティーが問われる時代の中で、企業のビジョンを国内外に発信していくときに、彼らのアート作品を活用することで、社会課題の解決を図るという企業のイメージを定着させるメリットがあります。それが結果として企業の売り上げにも貢献していくでしょうし、知的障害のあるアーティストの皆さんが、社会に新しい価値を提案できるきっかけづくりにもなる。そうした共生社会を実現するための関係性をつくっていきたいと考えているのです」(文登氏)
ヘラルボニーのビジネスは、知的障害者の方たちが住みやすい社会をつくることにつながる試みを基本としている。そうしたヘラルボニーの思いと、社会福祉施設との互いの信頼感を通じて、障害者の方たちをビジネスのパートナーとして社会に解き放っていきたいという。
「多くの人は、障害のある人ができないことを、できるようにしようと考えます。いかに健常者のレベルに近づけるかを目指す“支援する人”になりがちなんです。この関係性に無理がある。何が好きで得意なところはどこかを見極め、プラスの面を伸ばしていく伴走者であることが大事。これは特別支援教育にも入っていくといいなと考えています。
何より私たちが、知的障害のある人に食べさせてもらっている。支援の構造が逆転しているわけです。しかも、私たちはアートだけにこだわっているわけではありません。彼らにはアート以外にも得意なところがいっぱいあります。私たちはそこをリスペクトしながら、社会が彼らに依存していく新しいモデルをプロデュースしていきたいと考えているのです」(崇弥氏)

福祉をビジネスに結び付ける橋頭堡の役割を果たすヘラルボニー。彼らがこれから目指すものとは何か。文登氏がこう語る。
「こうした私たちのさまざまな試みを通じて障害のある人のイメージを変えていきたい。将来的には自分たちで社会福祉施設もつくっていきたいと考えています。この世に“障害者”という人物はいません。彼らをひとくくりにするのではなく、一人ひとり個性のある○○さんと、きちんと名前で呼ばれるようにする。そんな社会をつくっていきたいと思っています」
(写真:すべてヘラルボニー提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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