東京学芸大学附属竹早小学校の佐藤正範先生に聞いたBYOD事例 「先生のマインドチェンジを促すオンライン授業」
ほかにも、作図の課題などを動画で提出してもらったのですが、動画にすると出来上がったものだけでなく途中過程も見られるようになるので、これまで見えなかった1人ひとりの子どもの理解度や技量を、教師がより詳細に把握できるという新しい気づきがありました。
ICT活用で子どもたちのやる気は格段にアップ
――学校再開後のICT活用はどうですか?
今はまだ1人1台の環境が整っていないため、学校再開後は通常授業に戻っていますが、休んでいる子がオンラインから授業に参加できる体制と、BYODによる動画での課題提出は継続しています。
例えば、コロナ禍で実施できない音楽の授業の「演奏」や、家庭科の「調理実習」などは、家でやってもらってその様子を動画で提出させています。スマホから簡単に撮影もアップロードもできるのですが、動画となると子どもたちがすごくやる気を出し、とてもクオリティーが高い動画が届くんですよね。栄養教諭の先生は、それらの動画を見て感動して泣いていらっしゃいました。
また、課題提出にICTを活用すると、子どもたち同士が簡単にお互いの提出物を見ることができるようになります。「友達のものが見られる」というのを子どもたちはすごく楽しみにしていて、自身の課題に取り組むモチベーションアップや、よい意味でのプレッシャーになっているようです。
学芸大附属校の教師は、いわば、教育のスペシャリストなので、ICTに頼らなくてもよい授業を提供できるという自負があったと思います。その結果、これまではICTを活用しようという意欲が起こりにくかったのかもしれません。
ICTを活用すると「学びに向かう子どもの主体性が高まる」ということを実際に経験し、教師たちはICT活用に本気で向き合おうとするスイッチが入ったように感じます。また、学びの主体を子どもたちへ移していくということに対しても、これまで以上により強く意識するようになりました。
教師や保護者の方の中には、ICTに不慣れな方や子どもにまだ触れさせたくないという配慮をしている方もいます。しかし、コロナ禍で必要に迫られて実施したICTの教育活用によって、想像よりもよっぽど簡単にできることや、友達にオンラインで会いお互いの成果物を共有し合うことで子ども自身が元気になっていく様子を目の当たりにして、心配のあったご家庭もICTに対する意識が肯定的なものに変わったと感じます。
もしコロナ禍がなかったら、「黒板」という教師にとって鬼に金棒のようなツールを手放せず、教師が意図せずしてマウンティングを取ってしまう学びのスタイルは変えられなかったかもしれません。現在はBYODでの限定されたICT活用にとどまっていますが、ICTを活用して本気で教育改革に取り組む覚悟は固まったと思います。コロナ禍が、教師のマインドチェンジのきっかけになったと感じています。
(写真はすべて佐藤先生提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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